Paste Abstractionシリーズのコンセプト
人間が生まれて初めて口にする自然物は、流動食(離乳食)である。それは、人間が地球の生態系の中の一分子として歩み始めたことを証する食物でもある。一方、病や老いといった死が近いところで口にするのもまた同じように流動食である。そのように考えると、流動食とは、この世界への参加と離脱、つまり生と死という、相反する性質を持つアンビバレントな食物だといえるのではないだろうか。
本シリーズは、流動食に内包されている両義性をあぶり出そうとする試みである。流動食を、打ち水のようにぶちまけたり、ストライプやドットといった規則的なパターンとして配置したりする。それは、何かを調べる際の基本である、切る・砕くといった分析解剖の態度である。そこには自ずと、生と死とが交互に、あるいは混交して、消えつ浮かびつするのである。
cf.離乳食は乳児用の名称であり、流動食という食事形態に、離乳食は含まれる。