要冷凍シリーズ

要冷凍シリーズのコンセプト

アメリカの思想家デイヴィッド・ソローが湖畔の森の中に丸太小屋を建てて自給自足の生活を送った記録「ウォールデン 森の生活」を発表したのは1854年のことである。それは急速に工業化する時代にあって、ひとつの自然回帰の実践であった。それから150年あまり、彼のような骨太な行動は叶わなくとも、現代でも自然な生活を志向する人は少なくない。ナチュラルライフ、LOHAS、持たない暮らしと、表現こそ変われど都市工業化に対する反骨としての自然志向という構造はソローの時代と大差ない。
本シリーズは、現代における自然な生活とは何かを問うものである。モチーフには、人為的操作なしには存在しないアイスクリームを用いる。そのパッケージには「要冷凍」という表示がつきものであるが、今日では誰もそれに疑問を感じない。しかし、改めて考えてみれば、近代発明されたテクノロジーを前提とした要請に他ならない。その人工産物であるアイスクリームを、自然の状態へと、つまり常温に戻す。それは否が応でも人工的でしかあり得ない現代社会において、無邪気に自然回帰を試みる構図そのままではないだろうか。そしてドロドロに溶け出すそのさまは、我々の思い描く自然な生活がどのようなものであるか、またその行く末を暗示するのである。

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