I Love Americaシリーズのコンセプト
8月は、日本人にとって戦争の記憶濃くなる季節である。原爆や終戦に関する特番が組まれ、広島で行われる平和記念式典は全国に流れる。特に広島で生まれ育った私は、幼少の頃より戦争の話に触れてきた。祖父などは被爆こそ免れたものの、原爆の落ちた音を聞いたという。そうして先の大戦に思いをはせる時、アメリカという存在が中央に屹立してくる。
本シリーズは、日本人にとっての戦争、ひいてはアメリカとは何かを問うものである。そこで「敵性語」という社会運動にフォーカスしたい。戦時中の日本では、英語は敵性語だとして使用が禁じられていた。そのため、たとえば野球においてはストライクを「よし」、ボールを「だめ」などと表現した。注目すべきは、そのモノやコト自体は禁止されず、ただ言い換えた上で容認されていたことである。
結局、戦中から現在まで、日本はアメリカが大好きなのではないか。しかしそれは屈折した感情で、だからこそ敵性語のような茶番じみた解釈が必要とされた。私はこれに倣い、アメリカを象徴する食べ物であるハンバーガーを単純にひっくり返す。と、たちまちそれは憎き敵国のものであることをやめ、好ましい別ものに変容する。かつて日本が行っていたのは、まさにこの種の滑稽な解釈ではなかったか。むろん、一億の命を賭した真剣な解釈だったことも合わせて考えなければならないだろう。(2018.8.15)