仕事と家族 日本はなぜ働きづらく、産みにくいのか (筒井淳也 /中央公論新社)

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仕事は睡眠の次に人生を占拠するものであるので、仕事について考えることは人生を考えることでもある。

少子化や結婚といったテーマに多くページが割かれているが、重要なのは、この問題は、個人の考えや嗜好というよりも、社会の構造に大きく依存するのだという認識だろうと思う。社会が結婚させないし、子供を産ませない作りになっているのである。

簡単にいうと、ポスト工業化社会において女性が活躍するような仕組みになってきたのは、アメリカなどの「小さな政府」、すなわち低負担・低福祉の国か、スウェーデンなどの「大きな政府」、すなわち高負担・高福祉の国である。ドイツ、日本はこのどちらにも入っていない。そしてこのどちらにも入っていない国では、共通した問題に直面している。少子化である。

各種調査結果から明らかなように、日本人の結婚・出産についての価値観は「独身・子どもなし生活」を積極的に肯定するように変化してはいない。私たちは「独身・子なし」という生き方に価値を見出すようになったというよりは、「無理して結婚・出産しなくてもよい」と考えるようになってきた、というだけの話である。

職務内容が無限定的だと、柔軟で複雑な課題遂行が労働者に期待されることが増える。管理的立場にない労働者にも「問題解決」といった高度で抽象的な作業が要請されてしまうのである(熊沢 1997)。日本企業の採用において「コミュニケーション力」が重視される理由の一つはここにある。コミュニケーション力というのは、それ自体漠然とした能力であるが、あえていえば相手や自分が置かれた状況を理解し、相手の要求に適切に対応したり、自分側の事情・問題を上手に相手に伝えたりする能力であろう。このようなきめ細かい作業は、それ自体では女性を排除することはないだろうが(むしろ女性のほうが優位性を持つ可能性もある)、日本語を母語としない外国人労働者を基幹業務から排除する。

     

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