白い人・黄色い人 (遠藤 周作/講談社)

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白人女性とまぐわう中で、自分の肌の黄色い醜さ、白い肌を這う虫にようなおぞましさを感じる男性のくだりは非常に考えさせられるものがあった。

いわゆるレイシズムというのは、理屈でも理性でもなく感情の領域で、その感情をコントロールするのは紳士・淑女のたしなみの領域に留まり続けるのではないか。つまり、永遠に人種差別的感情というものが消え去ることはなく、ちょっと酔ったり、うっかりすると、すぐに顔を出してしまう類のもの、という。

あの女たちにとって皮膚が黒いということは、たんに黒いということではなかった。 (中略) 黒は罪の色なのである。 (中略) 白人たちのすることは、どんなことでも善であり、神聖なのだ。

冒頭には、ヨハネの默示録が3章15〜16節が引用されている。

われ汝の行爲を知る、なんぢは冷かにもあらず熱きにもあらず、我はむしろ汝が冷かならんか、熱からんかを願ふ。
かく熱きにもあらず、冷かにもあらず、ただ微温きが故に、我なんぢを我が口より吐き出さん
引用元: https://ja.wikisource.org/wiki/ヨハネの默示録(文語訳)

それは象徴的な意味であって、以下のように解説されている。

アジヤの有色人種でありながら、政治的、社会的には福澤諭吉の「脱亜入欧」となり、文化的には盲目的なまでの西洋憧憬・賛美を押し進めてきた近代日本。それをもっとも端的に言い表せば、「ヨーロッパでもありえず、反ヨーロッパでもありえぬ汎神論的位相の、極東の島国。そのような複雑さゆえに、本当の意味では世界から捨てられている孤児日本

ポーランドの収容所では捕虜たちに塩分を与えなかったという事実がそれだ。烈しい強制労働につかれた人間が塩を摂らねば、次第に衰弱していく、やがては疲労死をする。疲労死はおもてむき虐殺ではなく国際法上病死と宣言することができる。のみならず、この方法は一挙に大量の人間を死亡せしめるのに手間どらない。

     

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