ウンコはどこから来て、どこへ行くのか ――人糞地理学ことはじめ (湯澤 規子/筑摩書房)
購入価格:920円
評価:
この記事は約1分11秒で読めます
かつて価値のある財物だったものが、汚物となる、その価値観の変遷が興味深い。ウンコは今も昔も変わらず、ただただウンコなのであって、変化したのは我々のほうである。
ウンコを汚い不要なものと考える現代の価値観は、作為的に作られたものに過ぎないのだということを改めて考えたい。
李家正文の『古代厠攷』という書物によれば、平安時代には、あまりに美しいものには魔がさして、この世を生きてゆくことができないと信じられていたため、子どもの健やかな成長を願って、わざと、汚いものを名前につけるという風習があったという。こうすれば、悪霊や鬼の目から逃れることができると信じられていたからである。たとえば紀貫之の子どもの頃の名前は「阿古屎(阿古久曽)」という。不浄の「屎」を名とするこうした命名法は、ひろく民間に伝わっていたらしい。この場合、子どもの成長を守る大切な名だからこそ、「汚れ」が必要であったということにな る。
ウンコの値段は仕入れ先によってランクがあった。貧富の差によって食べるものが異なれば、ウンコに含まれる内容にも違いがあるからである。武家の糞尿は高価だった。また、今のアパートのような「長屋」の便所に溜まる糞尿も大家の重要な収入源であり、財産だった。そしてその支払いは、前にも述べた通り、貨幣のほかに、野菜や漬物といった現物との交換によってなされたのである。
下肥を使わない野菜を「清浄野菜」と称して、下肥で育てた野菜と区別した。国語辞典によれば、清浄野菜とは、「下肥を使わず、化学肥料で栽培した野菜」、と定義されている。
- 前の記事
- 白い人・黄色い人
- 次の記事
- 越えていく人——南米、日系の若者たちをたずねて
ご支援のお願い
もし当ブログになんらかの価値を感じていただけましたら、以下のいずれかの方法でご支援いただけますと幸いです。
Amazonギフト券で支援する
→送信先 info@tomonishintaku.com
ブログ一覧
-
ブログ「むろん、どこにも行きたくない。」
2007年より開始。実体験に基づいたノンフィクション的なエッセイを執筆。アクセス数も途切れず年々微増。不定期更新。
-
英語日記ブログ「Really Diary」
2019年より開始。もともと英語の勉強のために始めたが、今ではすっかり純粋な日記。呆れるほど普通の内容なので、新宅に興味がない人は読んで一切おもしろくない。
-
音声ブログ「まだ、死んでない。」
2020年より開始。ロスのホームレスとのアートプロジェクトでYouTubeに動画をアップしたところ、知人にトークが面白いと言われたことをきっかけにスタート。その後、死ぬまで毎日更新することとし、コンテンツ自体を現代アートとして継続中。
-
読書記録
2011年より開始。過去十年以上、幅広いジャンルの書籍を年間100冊以上読んでおり、読書家であることをアピールするために記録している。各記事は、自分のための備忘録程度の薄い内容。WEB関連の読書は合同会社シンタクのブログで記録中。
関連記事
死後はどうなるの?
2014/08/13 book-review book, migrated-from-shintaku.co
ある夜、ふと死んだらどうなるのだろうと思って検索して買ってみた本。 何を期待して ...
フランダースの犬 (世界名作ファンタジー31)
2016/04/25 book-review book, migrated-from-shintaku.co
構想中の作品資料として。改めて読むと興味深いストーリー。
Toy Guns Are Obsolete: Tell All The Kids You Meet
2017/05/30 book-review book, english, migrated-from-shintaku.co
英語多読の一環。
日本企業の社員は、なぜこんなにもモチベーションが低いのか?
2019/09/19 book-review migrated-from-shintaku.co
米コンサルによる日本批評。アメリカの小学校の成績表にあるというworks wel ...
わたしを離さないで
2013/08/24 book-review book, migrated-from-shintaku.co
随所に狂気を感じる。著者はパチンコ狂いで、それを研究と称して通いつめているように ...