「死」とは何か イェール大学で23年連続の人気講義 日本縮約版 (シェリー・ケーガン (著), 柴田裕之 (翻訳)/文響社)

書籍「死」とは何か イェール大学で23年連続の人気講義 日本縮約版(シェリー・ケーガン  (著), 柴田裕之 (翻訳)/文響社)」の表紙画像

購入価格: Kindle Unlimited(0円)

評価:

この記事は約2分52秒で読めます

これを読んだ人の何割かは、必ず「めんどくさい屁理屈が延々と続く」と感じるのではないかと思う。

私自身はこの種の屁理屈が大好物なのだが、それでもちょっと、読んでいて何度か「もうどうでもよくね? どうせ死ぬし」という気持ちにさせられた。

しかし彼の展開する屁理屈は(あえて哲学でも理論でもなく屁理屈と呼ぶ)、非常に素晴らしいものだと思う。この屁理屈は、真剣に考えれば考えるほど、ふだん我々の頭の中をいっぱいにして忙殺している金や仕事といったプラグマティックな思考から解き放つ力がある。

『「生きてて良かった」がある以上、「死んだほうが良かった」は否定できない』なんてくだりは、思春期の生意気なクソガキが口にしそうな文句ではあるが、誰にも言い返す言葉が見つからないはずだ。

仮に、私は死後、存在しなくなるとしよう。その場合、じっくり考えてみると、死が私にとってどうして悪いものでありうるか、わからなくなってしまう。なにしろ、死んでしまった私にとって、死が悪いものであることなどありえないように思えるからだ。存在してさえいないものにとって悪い、ということが、どうしてありうるだろう? さらに言えば、死んだ私にとって死が悪いものでありえないのなら、死んでからに限らず、私にとって死がどうして悪いものでありえようか?つまるところ、まだ生きている今の私にとって、死が悪いものでありうるとは、とうてい思えないのだから!

けっきょく、自分自身の死は想像しようがなく、想像しようとするたびに、自分が傍観者として本当は生き延びていることが見て取れる。したがって、精神分析の学派では、あえて断言できるだろう。心の奥底では誰一人自分が死ぬとは信じていない、と。あるいは、同じことなのだが、無意識の中で、私たちの誰もが自分は不滅だと確信している、と。

みなさんは芸術が好きかもしれない。芸術がとても重要なので、傑作を鑑賞する覚悟ができるだろうか──その作品を楽しんでいる間は死ぬかもしれないが、それ以外は絶対死なないと知っていても?セックスは、している間に死ぬ危険を冒す覚悟ができるほど価値があるか?それをすれば、しない場合にはないもの、すなわち死の危険が生じるとしてもなお、とても価値があるのでやってみる気になるのはどんな活動かと自問すれば、自分が何を最も価値のあるものと考えているかがわかる。このようにこの質問を提起するにあたって、私は、死の危険を伴うにもかかわらず私たちがやるだろうことがあるという前提に立ってきた。

ご支援のお願い

もし当ブログになんらかの価値を感じていただけましたら、以下のいずれかの方法でご支援いただけますと幸いです。

Amazonギフト券で支援する
→送信先 info@tomonishintaku.com

Amazonほしい物リストで支援する

PayPalで支援する(手数料の関係で300円~)

     

ブログ一覧

  • ブログ「むろん、どこにも行きたくない。」

    2007年より開始。実体験に基づいたノンフィクション的なエッセイを執筆。アクセス数も途切れず年々微増。不定期更新。

  • 英語日記ブログ「Really Diary」

    2019年より開始。もともと英語の勉強のために始めたが、今ではすっかり純粋な日記。呆れるほど普通の内容なので、新宅に興味がない人は読んで一切おもしろくない。

  • 音声ブログ「まだ、死んでない。」

    2020年より開始。ロスのホームレスとのアートプロジェクトでYouTubeに動画をアップしたところ、知人にトークが面白いと言われたことをきっかけにスタート。その後、死ぬまで毎日更新することとし、コンテンツ自体を現代アートとして継続中。

  • 読書記録

    2011年より開始。過去十年以上、幅広いジャンルの書籍を年間100冊以上読んでおり、読書家であることをアピールするために記録している。各記事は、自分のための備忘録程度の薄い内容。WEB関連の読書は合同会社シンタクのブログで記録中。

  関連記事

街道をゆく〈35〉オランダ紀行

2022/01/23   歴史・地理, 読書記録

父が大の司馬遼太郎ファンなので、私がオランダに行くということで、自身の蔵書から手 ...

毎月3万円で3000万円の「プライベート年金」をつくる 米国つみたて投資

投資の初心者も初心者なので、へーと思う部分がいくつかあった。 人生一発逆転的な投 ...

サラ金の歴史 消費者金融と日本社会

2022/07/22   政治・社会, 読書記録

サラ金は「サラリーマン金融」の略だというのは常識なのだろうか。私はまずそこになる ...

決断力

Twitterで彼の考える「才能とは何か」というくだりを見かけて興味を覚えたので ...

無名の人生

人生も折り返し地点を過ぎ、振り返れば名誉欲の追求に汲々としてきた我が人生だが、い ...

当サイト内の文章・画像等の内容の無断転載及び複製等の行為はご遠慮ください。

Unauthorized copying and replication of the contents of this site, text and images are strictly prohibited. All Rights Reserved.

Copyright © 2012-2024 Shintaku Tomoni. All Rights Reserved.