内部の人間の犯罪 秋山駿評論集 (秋山駿/講談社)

書籍内部の人間の犯罪 秋山駿評論集(秋山駿/講談社)」の表紙画像

購入価格:1463

評価:

この記事は約1分3秒で読めます

あらゆる事柄が単純化され、あるいは曲解される現代ではとても発表できそうにない論理が延々と展開される。

それはどこか金持ちの悪趣味にも似て、一般に醜悪とされているものをこそ愛でるような狂気を感じざるを得ない。

なんて、良識的なことを言いつつ、著者の考え方は嫌いではないし、むしろ好感を覚える。おそらくそれは、私が芸術家の端くれゆえなのかもしれない。

理由なき殺人という生の磁場に興味を抱いたわたしは、その後新聞記事の描く犯罪を見ているうちに、文学の場合とまったく同様に、いろいろなかたちの作品(犯行)があるものだな、と目を打たれるようになった。一つ一つの犯行の個性ということではなく、犯行の作品としてのかたちの違い、といったものだ。

二十歳の頃、チボーデの『ボードレール論』の中で、次の言葉に出遭ったとき、私の感覚は急所を搏たれた。──「都市とは人間の森林である」うまいことを言う。森林は、限りなく奥深く、そして暗い。いわば、影の部分と、迷路の領域とに満ちている。その迷路の領域は、都市の不思議を出現させ、その影の部分こそ、都市の迷路をさまよう人間に、一匹の狼の心情を養うものではあるまいか。

よく生きるためには、未来というものが信じられなければならない。死刑囚の未来とは、やがて確実に予定されている死刑のことか、そんなものは未来ではない。

前の記事
仮想通貨3.0
次の記事
喧嘩両成敗の誕生

ご支援のお願い

もし当ブログになんらかの価値を感じていただけましたら、以下のいずれかの方法でご支援いただけますと幸いです。

Amazonギフト券で支援する
→送信先 info@tomonishintaku.com

Amazonほしい物リストで支援する

PayPalで支援する(手数料の関係で300円~)

     

ブログ一覧

  • ブログ「むろん、どこにも行きたくない。」

    2007年より開始。実体験に基づいたノンフィクション的なエッセイを執筆。アクセス数も途切れず年々微増。不定期更新。

  • 英語日記ブログ「Really Diary」

    2019年より開始。もともと英語の勉強のために始めたが、今ではすっかり純粋な日記。呆れるほど普通の内容なので、新宅に興味がない人は読んで一切おもしろくない。

  • 音声ブログ「まだ、死んでない。」

    2020年より開始。ロスのホームレスとのアートプロジェクトでYouTubeに動画をアップしたところ、知人にトークが面白いと言われたことをきっかけにスタート。その後、死ぬまで毎日更新することとし、コンテンツ自体を現代アートとして継続中。

  • 読書記録

    2011年より開始。過去十年以上、幅広いジャンルの書籍を年間100冊以上読んでおり、読書家であることをアピールするために記録している。各記事は、自分のための備忘録程度の薄い内容。WEB関連の読書は合同会社シンタクのブログで記録中。

  関連記事

スピリチュアルズ 「わたし」の謎

タイトルに問題がある。少なくとも日本では、「スピリチュアル」という言葉は神秘・オ ...

「死」とは何か イェール大学で23年連続の人気講義 日本縮約版

これを読んだ人の何割かは、必ず「めんどくさい屁理屈が延々と続く」と感じるのではな ...

実録 ドラッグ・リポート

大学の時分からドラッグにはなみなみならぬ興味があるので、非常におもしろく読めた。 ...

私の財産告白

久しぶりに心から尊敬できる人物に邂逅したという気持ち。 すべてその通りとしか言い ...

魂をゆさぶる歌に出会う――アメリカ黒人文化のルーツへ

奴隷としてアメリカくんだりまで連れ去られたBlackたちにとって、歌は単なる歌で ...

当サイト内の文章・画像等の内容の無断転載及び複製等の行為はご遠慮ください。

Unauthorized copying and replication of the contents of this site, text and images are strictly prohibited. All Rights Reserved.

Copyright © 2012-2024 Shintaku Tomoni. All Rights Reserved.