オランダを知るための60章 エリア・スタディーズ (長坂 寿久/明石書店)
購入価格:1760円
評価:
この記事は約2分43秒で読めます
オランダと日本の関係は400年以上で、たとえば長崎の出島のことを知らない人はいないだろう。
しかし本書を読めば、それはオランダの歴史や文化のほんの一部であって、もっと知るべき、学ぶべきことが山ほどあることを痛感させられる。
麻薬は、オランダでももちろん公式には違法だが、個人使用の大麻(マリファナ、ハッシッシのソフトドラッグ)の少量所有は訴追しないという黙認政策をとってきた。この国ではコーヒーショップで自由にソフトドラッグを買うことができる(但し一回三グラム以内)。この取引は通常の商品の取引と同様に課税(付加価値税一五%)される。オランダがソフトドラッグを実質的に「自由化」したのは七〇年代である。
アイセル湖の水はその後淡水化し、現在ではこのアイセル湖の水が、川と氷河に押し流されてきた湖底の砂に濾過され、浄水され、その濾過した水がオランダ人の飲料水として供給されている。この濾過効果の故に、オランダの水は他の欧州各国の水と違いそのまま飲めるのだ。
オランダの民主主義にとって、水との闘いの歴史が与えた影響も大きかった。オランダの独特の社会システムは、この国の風土、とくに水との闘いの歴史に起因している。この国は水を管理(治水)することによって、国家を造ってきた。堤防は一カ所でもれたらおしまいである。だから治水は全員参加で、皆と相談しながら、コンセンサスを得ながら行う管理を必要としてきた。そこで治水の前には皆が対等であるノン・ヒエラルキーの平等を原則とする社会ができ、洪水対策・治水対策としてどの方法が最もいいのか激しく自己主張を闘わせるが、洪水が来るまでに合意する、つまり、議論のための議論ではなく、合意のための議論を行いつつ、機能的・実際的に合意して対処する文化が生まれ、それが米国や英国とも違う「オランダ的民主主義」を創り上げてきた。
アムステルダムは運河を築いて街を造ってきた。運河沿いの家は、場所として限られると共に、それだけで船が横づけできる流通拠点となるため非常に貴重であった。そこで間口の大きさに応じて税金が設定された。そのため、運河沿いの家は、間口の小さい、しかし奥に細長く伸びた建物となった。これもオランダ人を実際的かつ倹約的性格にした風土の一つかもしれない。
- 前の記事
- 55歳からでも失敗しない投資のルール
- 次の記事
- 最新版 投資信託はこの9本から選びなさい
ご支援のお願い
もし当ブログになんらかの価値を感じていただけましたら、以下のいずれかの方法でご支援いただけますと幸いです。
Amazonギフト券で支援する
→送信先 info@tomonishintaku.com
ブログ一覧
-
ブログ「むろん、どこにも行きたくない。」
2007年より開始。実体験に基づいたノンフィクション的なエッセイを執筆。アクセス数も途切れず年々微増。不定期更新。
-
英語日記ブログ「Really Diary」
2019年より開始。もともと英語の勉強のために始めたが、今ではすっかり純粋な日記。呆れるほど普通の内容なので、新宅に興味がない人は読んで一切おもしろくない。
-
音声ブログ「まだ、死んでない。」
2020年より開始。ロスのホームレスとのアートプロジェクトでYouTubeに動画をアップしたところ、知人にトークが面白いと言われたことをきっかけにスタート。その後、死ぬまで毎日更新することとし、コンテンツ自体を現代アートとして継続中。
-
読書記録
2011年より開始。過去十年以上、幅広いジャンルの書籍を年間100冊以上読んでおり、読書家であることをアピールするために記録している。各記事は、自分のための備忘録程度の薄い内容。WEB関連の読書は合同会社シンタクのブログで記録中。
関連記事
映画を早送りで観る人たち~ファスト映画・ネタバレ――コンテンツ消費の現在形~
まず、1982年生まれの中年男性としては、本書を「ばかじゃねえの? 作品なめてん ...