死について考える (遠藤 周作/光文社)

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あとがきによると、著者はできる限りキリスト教的な物言いを避けたという。

だからかどうか、本書には葛藤のようなものが感じられる。おそらく、キリスト教的な視点で死を語れば、すべては明快で、単純になる。

著者が自分の人生において起こったひとつひとつの出会いと別れ。そのときどきで何を感じ、何を思ったか。宗教を抜きにして導き出されたそれは、妙にピュアで無理がなく、心に響く。

カトリックは自殺を認めないとよく言われます。私の考えでは、それはキリスト教が一番大事にする「愛」が自殺に欠けているからだろうと思います。人生は苦しく醜い。しかし苦しく醜いからそれを棄てるのは、ちょうど、うちの女房がデブで婆あになったから棄てるのと同じじゃありませんか。美しく魅力あるものを大事にするのは愛じゃありません。苦しく、醜いものでも大事に守りつづけよというのがキリスト教のいう「愛」のひとつの考えだ、と私は思っています。

「苦しくて祈れません」「不安で祈れません」「もう絶望して祈れません」「神様がいないような気がしてきましたので祈れません」「こんな目にあわせる神様、とても祈れません」というような祈れませんであっても、それは神との対話ですから既に祈りです。

道徳なんて若い者には必要だろうけど、年をとると必要なくなるね、体力気力が衰えて来ると、別に道徳を説かなくても、人間なんて自然に道徳に従うようになるものだ

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