皇軍兵士の日常生活 (一ノ瀬俊也/講談社)

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戦争の映像くらいは誰でも見たことがあろう。しかしその爆発とか、突撃とか、その裏にある血の通った人間を感じることは難しい。

本書は兵士という単なるイメージに、血を通わせ、現代人にもリアルな兵士像を結ばせる一冊である。

一九四二(昭和一七)年、八木中隊に入った召集兵の横山立紀によると、入営当初は「五分間で飯を食い、後片付けをせよ!」とか、「三分間で入浴を済ませ!」などとつぎつぎに不可能な要求が追いかけてくるので、「精神を錯乱させ、思考することを忘れさせ、行動力を麻痺させ、オロオロして右往左往するばかりの忘我状態に落ち入」り、目が据わって喜怒哀楽の表情さえ消失してしまうという。

殺伐とした制裁は本来は〝暴力装置〟である軍隊の本質的問題であるにもかかわらず、将校たちはそれを組織の問題ではなく「鬼のような古兵」個人の問題へと矮小化することをめざしていた。この問題にかんしては天皇や軍・将校は悪くない、禁止したにもかかわらず私的制裁を隠れておこなう古兵が悪いのだということにしてしまえば、根本の「皇軍」、さらには天皇制に兵士の恨みは向かわないのである。

日露戦争時の戦死者にかんしては、「ポン、コロリ」と一発の弾丸で斃れたことを隠そうと上官が遺族への手紙で勇敢な戦死だったと作文したり、遺骨を小包郵便で遺族に直接送付して問題になるなどの裏面が多々あった(大江『日露戦争の軍事史的研究』)ことに留意されねばならない。

     

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