皇軍兵士の日常生活 (一ノ瀬俊也/講談社)

書籍皇軍兵士の日常生活(一ノ瀬俊也/講談社)」の表紙画像

購入価格:825

評価:

この記事は約1分8秒で読めます

戦争の映像くらいは誰でも見たことがあろう。しかしその爆発とか、突撃とか、その裏にある血の通った人間を感じることは難しい。

本書は兵士という単なるイメージに、血を通わせ、現代人にもリアルな兵士像を結ばせる一冊である。

一九四二(昭和一七)年、八木中隊に入った召集兵の横山立紀によると、入営当初は「五分間で飯を食い、後片付けをせよ!」とか、「三分間で入浴を済ませ!」などとつぎつぎに不可能な要求が追いかけてくるので、「精神を錯乱させ、思考することを忘れさせ、行動力を麻痺させ、オロオロして右往左往するばかりの忘我状態に落ち入」り、目が据わって喜怒哀楽の表情さえ消失してしまうという。

殺伐とした制裁は本来は〝暴力装置〟である軍隊の本質的問題であるにもかかわらず、将校たちはそれを組織の問題ではなく「鬼のような古兵」個人の問題へと矮小化することをめざしていた。この問題にかんしては天皇や軍・将校は悪くない、禁止したにもかかわらず私的制裁を隠れておこなう古兵が悪いのだということにしてしまえば、根本の「皇軍」、さらには天皇制に兵士の恨みは向かわないのである。

日露戦争時の戦死者にかんしては、「ポン、コロリ」と一発の弾丸で斃れたことを隠そうと上官が遺族への手紙で勇敢な戦死だったと作文したり、遺骨を小包郵便で遺族に直接送付して問題になるなどの裏面が多々あった(大江『日露戦争の軍事史的研究』)ことに留意されねばならない。

ご支援のお願い

もし当ブログになんらかの価値を感じていただけましたら、以下のいずれかの方法でご支援いただけますと幸いです。

Amazonギフト券で支援する
→送信先 info@tomonishintaku.com

Amazonほしい物リストで支援する

PayPalで支援する(手数料の関係で300円~)

     

ブログ一覧

  • ブログ「むろん、どこにも行きたくない。」

    2007年より開始。実体験に基づいたノンフィクション的なエッセイを執筆。アクセス数も途切れず年々微増。不定期更新。

  • 英語日記ブログ「Really Diary」

    2019年より開始。もともと英語の勉強のために始めたが、今ではすっかり純粋な日記。呆れるほど普通の内容なので、新宅に興味がない人は読んでも一切おもしろくない。

  • 音声ブログ「まだ、死んでない。」

    2020年より開始。日々の出来事や、思ったこと感じたことをとりとめもなく吐露。死ぬまで毎日更新することとし、コンテンツ自体を現代アートとして継続中。

  関連記事

投資で利益を出している人たちが大事にしている45の教え

本書を読んでおけば、投資をしていれば必ず出会うであろう困難な時期でも冷静に対処で ...

普通の会社員でもできる 日本版FIRE超入門

今年の2月ごろに「FIRE 最強の早期リタイア術 最速でお金から自由になれる究極 ...

街道をゆく〈35〉オランダ紀行

2022/01/23   歴史・地理, 読書記録

父が大の司馬遼太郎ファンなので、私がオランダに行くということで、自身の蔵書から手 ...

スピリチュアルズ 「わたし」の謎

タイトルに問題がある。少なくとも日本では、「スピリチュアル」という言葉は神秘・オ ...

人生の短さについて 他2篇

翻訳のおかげかどうか、ページをめくるたびに、これぞこの世の真理だと素直に信じられ ...

当サイト内の文章・画像等の内容の無断転載及び複製等の行為はご遠慮ください。

Unauthorized copying and replication of the contents of this site, text and images are strictly prohibited. All Rights Reserved.

Copyright © 2012-2025 Shintaku Tomoni. All Rights Reserved.