0歳からはじまるオランダの性教育 (リヒテルズ 直子/日本評論社)

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正直、たかが性教育とあなどっていたが、そこにはその国の態度というか、意志が如実に表れている。

それはつまり、隠さずオープンにする、そして現実から目をそらさず向き合うということである。

オランダの薬物に対する取り締まりにも通じるものがある。

たとえば、薬物中毒者がせめてエイズ等の感染症にはならないように、滅菌された注射針を国が無料配布しているというのが良い例だろう。

とはいえ、著者も書いているように、これをそのまま日本でも導入できるかと言えば疑問が残る。しかし、単なるエロや不道徳として放置するのではなく、身を守る手段としての性教育の価値は、近年ますます高まっているのではないだろうか。

「赤い箱」というのは、オランダの学校では有名で、小学校高学年の教室にもときどき備えてあります。なかには、ありとあらゆる避妊具の実物と、実物大のペニスの模型が入っています

1975年、オランダの歴史家H・W・フォンデルドゥンクは「オランダは、この10年間に、西側世界において最も反伝統的な国になった」と言い、イギリスのあるジャーナリストは、すでに1967年にこのことをもっと単刀直入に「オランダ人は退屈であることをやめた」と言っている。 (中略) 夫を亡くした中年の女性が、ほかの男性と恋に落ちて関係をもったことに対して、村人たちが、二人を家から引きずり出し、堆肥の積まれた荷車に乗せて罵声を浴びせながら村中を引きずり回したという事件でした。1961年11月10日のことです。この事件は、実は、国内でもあまりの「古臭さ」のため、メディア上で話題となり議論が起きました。そして、隣国ドイツやアメリカの人々が「オランダは遅れた古臭い国」だというイメージをもっていることに、オランダの人々は強い恥ずかしさを感じたといいます。

オランダに住む人は、国民であるか否かにかかわらずいかなる人も差別されないことを明記したオランダ憲法第1条に基づくものです。その意味で、オランダの性教育は、オランダ憲法を人々が遵守するための、広い意味での「市民性教育」でもあるのです。男女の差別も、異性愛者とLGBTの差別も、文化や宗教的な違いによる差別も、障害のあるなしによる差別も、オランダでは憲法に則り、処罰の対象です。性教育が教えようとしているのは、子どもたちが、人を差別したり、排除したりすることのない人間になることです。

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