美術館の誕生―美は誰のものか (岩渕 潤子/中央公論社 )

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あらためて、月に一冊くらいは美術関連の本を読むことを必須にしようと思い、その取り組みの第一冊目。

著者は日本の美術館がつくづく面白くないというが、個人的には、だからといって海外の美術館ならば面白いという気もしない。美術館自体、かなり退屈なものだと思っている。

美術館というのは、やはり一種のステータスであり、お飾りなのだと思う。飾りというものは往々にして邪魔で余計なもので、面白いものではない。

まあ、美術、アート自体がこの世において余計なもの以外のなにものでもないので、面白いとかそういう話ではないのかもしれない。

とはいえ、私はアートを愛している。だが、言うほど面白いものではない。二十年ほど本気でアートをやってきた者としての、偽らざる本音である。

欧米での博物館・美術館、特に、公共施設としてのそれは、後で詳しく述べることになるが、正に長い時間をかけて、社会の発展と共に誕生したものである。「公共 =社会のすべての人」が自由に出入りできる施設としての美術館、たとえば、パリのルーヴル美術館を考えた場合、あらゆる階層の市民が王室所有の絵画や彫刻を見る権利を獲得するためには、まず、人々は革命を起こし、国王夫妻をギロチンにかけなければならなかった。「国民すべてが国王所有の絵画や彫刻を見る」ということが、当時のフランスの一般市民にとってどんな意味を持ち、どれほど大変なことであったかが、明治ニッポンの一般庶民に理解できただろうか?

「東京都現代美術館」は、作品の購入に関して「二億円に満たない作品については個々の値段が非公開」になっており、また、汚職を防ぎ、作品購入のための委員会のメンバーに迷惑がかからないように名前を非公開にしたという。決して、メトロポリタン美術館を見習うべきだというつもりではないが、やはり、一個人からの善意の寄付を受け付けるのではなく、税金で作品を購入している以上、どんなに低い価格のものでも作品の値段を明らかにするのは当然であるし、作品購入を決定する人々には、迷惑がかかることを承知の上でメンバーになっていただくのが当然ではないかと、私は考える。また、少しでも購入資金の使い道、選定の基準に曖昧なところがあると感じられたら、館長、キュレーター、選定委員、作品の入手先の人物などを喚問して、積極的に公聴会を開くべきである。公の場で、作品について説明し、その価値の高さ、それを購入する正当性を説明できてこそ、初めて美術館館長やキュレーターが一般の人から尊敬されるようになるのではないだろうか。

上から下まで絵画をぎっしり並べたクァドレリアの、近代フランス絵画などで見かける画商の店頭のようなスタイルは、必要に迫られて生まれたものなのだ。  クァドレリアの代表的な例としては、フィレンツェのピッティ宮内のパラティーナ美術館がある。現在では、見学者が見やすいようにとの配慮から展示点数が減らされているものの、四方の壁を見回すとめまいを催すほどの迫力は今でも十分に維持しており、一見の価値がある。日本では、軸物や屏風仕立てが多い日本画の形態が、こうした展示方法には不向きなので、クァドレリアのような展示形態は定着しなかったようだ。クァドレリアは、やはり、ヨーロッパの古い美術館ならではの展示方法といえるのではないだろうか。

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