「カルト」はすぐ隣に  オウムに引き寄せられた若者たち (江川 紹子/岩波書店)

書籍「カルト」はすぐ隣に  オウムに引き寄せられた若者たち(江川 紹子/岩波書店)」の表紙画像

購入価格:990

評価:

この記事は約2分31秒で読めます

本書を読んで、そしてオウム真理教のドキュメンタリー「A」も見てみると、自然、信者のほうにこそ肩入れしている自分がいる。

現実の矛盾をごまかせない、ある種の不器用さが、オウムというか、カルトへ傾倒するエネルギーになるのだろう。

「納得できないことを納得したようなフリをして生きる」苦しさを、確かにオウムは受け止めていた。ぼんやりと、他に代替となる何かがあるはずだとは思うが、適当な答えが見つからないというのは、つまり、そういうことなのかもしれない。

坂本が所属する法律事務所に行って抗議しました。しかし、それで坂本弁護士の教団に対する姿勢が揺らぐはずもなく、別れ際、「信教の自由」を主張する教団側に対し、「人を不幸にする自由はない」と言い渡したのでした。

セミナーに参加している人の大部分は、セミナー中に何らかの「神秘体験」をしたい、あるいは自分の身体に起こった変化を「神秘体験」と言ってもらいたい、という願望を胸に抱えています。このような人たちは、あまり意味のない体験をしたとしても、「それはアストラルの体験ですね」とか「クンダリニーの上昇ですね」など、自分が求めている答えが得られるまで質問し続けるのです。こうして、意味のない体験が、いつの間にか意味のある「神秘体験」として認識され、自分は貴重な「神秘体験」をしたと思い込む自己満足の世界に浸っていくことになるのでした。

広瀬は、高校三年生の頃から、「自分の生きる意味はなんだろう」と考え始めました。彼は、オーディオ機器に関心があったのですが、家電販売店の店先で、少し前に発売されたばかりの製品が安売りされているのを見たのが、悩みのきっかけでした。もともと理科系が得意で物作りにも興味がありました。けれども、商品の価値があっという間に下落し、失われてしまうのに、とてつもない虚しさを感じたのです。科学者が、社会にとって「よかれ」と思って開発した技術が、軍事に使われたりするのにも違和感を覚え、そうした仕事が虚しく感じられました。

ご支援のお願い

もし当ブログになんらかの価値を感じていただけましたら、以下のいずれかの方法でご支援いただけますと幸いです。

Amazonギフト券で支援する
→送信先 info@tomonishintaku.com

Amazonほしい物リストで支援する

PayPalで支援する(手数料の関係で300円~)

     

ブログ一覧

  • ブログ「むろん、どこにも行きたくない。」

    2007年より開始。実体験に基づいたノンフィクション的なエッセイを執筆。アクセス数も途切れず年々微増。不定期更新。

  • 英語日記ブログ「Really Diary」

    2019年より開始。もともと英語の勉強のために始めたが、今ではすっかり純粋な日記。呆れるほど普通の内容なので、新宅に興味がない人は読んで一切おもしろくない。

  • 音声ブログ「まだ、死んでない。」

    2020年より開始。ロスのホームレスとのアートプロジェクトでYouTubeに動画をアップしたところ、知人にトークが面白いと言われたことをきっかけにスタート。その後、死ぬまで毎日更新することとし、コンテンツ自体を現代アートとして継続中。

  • 読書記録

    2011年より開始。過去十年以上、幅広いジャンルの書籍を年間100冊以上読んでおり、読書家であることをアピールするために記録している。各記事は、自分のための備忘録程度の薄い内容。WEB関連の読書は合同会社シンタクのブログで記録中。

  関連記事

知価革命 工業社会が終わる 知価社会が始まる

1990年に書かれた本であることを考えると、これぞ予言書というべき内容である。 ...

問題は英国ではない、EUなのだ 21世紀の新・国家論

2022/12/31   政治・社会, 読書記録

ページをめくるごとに強烈な知見が展開される、非常に刺激的な一冊。 本書で完全にエ ...

沖縄女生徒の記録 生贄の島

2022/08/11   文学・評論, 読書記録

いわゆるグロ描写の連続で、苦手な人は読むのも辛いだろう。 しかし、これは確かに人 ...

ヒトはなぜ自殺するのか:死に向かう心の科学

自殺の衝動は生の衝動でもあるとはよく言われることだが、果たして本当だろうか。 み ...

ビットコイン、強気にならずにはいられない理由

本書を読めば、ビットコインが貨幣の再発明ともなり得ることが実感を持って理解される ...

当サイト内の文章・画像等の内容の無断転載及び複製等の行為はご遠慮ください。

Unauthorized copying and replication of the contents of this site, text and images are strictly prohibited. All Rights Reserved.

Copyright © 2012-2024 Shintaku Tomoni. All Rights Reserved.