リーダーのための経営心理学 ―人を動かし導く50の心の性質 (藤田 耕司/ 日本経済新聞出版社)

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給与水準を上げる前に、ちゃんとスタッフのモチベーションを気にかけてケアしているかというのは、昨今の慢性的な低賃金の状況では「いやいや舐めんな金払え」と言われそうではある。しかし私の場合、「十分な金さえ払えば人はほっといてもちゃんと働く」という、行き過ぎた資本家マインドがあったため、考えさせられるものがあった。

会社経営を2年近くやってみて思うのは、会社というのはまったくもって資本と労働のバランスをとるだけのドライな世界ではなく、もっとドロドロとした湿っぽい感情で動いている世界なのだということ。

逆に言えば、実務的な能力はイマイチでも、人身掌握術に長けていればある程度の経営者にはなれてしまうのではないだろうか。

この事例の場合、同じ内容の助言であっても、この社長よりもずいぶん年下である私の意見としてお伝えするより、この社長もその実績と能力を認める松下幸之助氏が実際にやられていたこととしてお伝えした方が、社長も受け入れやすいでしょう。同じことを言うにしても、「誰が言うか」によって、その言葉の力は大きく変わります。言葉に最大限の力を持たせるためには、誰の言葉として伝えるべきか。こういった点も、臨機応変に考えて対話を進めることが大切になります。

モチベーションを考えるうえで給与水準や給与体系は重要な要素です。しかし、動機付け・衛生理論から考えれば、モチベーションを上げるためには衛生要因である給料を上げるよりも、達成や承認といった動機付け要因を増やすことの方が効果的だと考えられます。そのため、達成感が得られる仕事の内容なのか、褒める、感謝の言葉を伝えるといったことができているかなどについてお聞きし、そういったことが十分にされていないのであれば、給与水準や給与体系を変える前に、それらのことに取り組んでいただくようにします。

アメリカの心理学者クレイトン・アルダファーがマズローの欲求段階説を発展、修正し、提唱した「ERG理論」です。ERGとは、次の3つの欲求を表す言葉の頭文字をとったものです。

・Existence(生存欲求):生きることに対する物質的・生理的欲求で、食べ物や住環境などの欲求や賃金、雇用条件、安全な職場環境などに対する欲求。
・Relatedness(関係欲求):家族や友人、上司、同僚、部下、その他重要な人と良好な人間関係を持ちたい、認められたいという欲求。
・Growth(成長欲求):自分が興味を抱く分野で能力を伸ばし成長したい、苦手分野を克服したいという欲求や、創造的・生産的でありたいとする欲求。

アルダファーは現代のような安定した状況では、マズローの欲求段階説のように下位の欲求が満たされると上位の欲求が生じるという形で段階的に欲求が生じるのではなく、状況に応じて、3つの欲求が並列的に生じることがあるとしています。

     

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