現代美術―アール・ヌーヴォーからポストモダンまで (海野 弘、小倉 正史/新曜社)

書籍現代美術―アール・ヌーヴォーからポストモダンまで(海野 弘、小倉 正史/新曜社)」の表紙画像

購入価格:95

評価:

この記事は約2分16秒で読めます

あの人はおかしいとか、なんとか、人は言う。しかし、その判断基準、ふりかざすモノサシの不確かさ、曖昧さについて疑う人は少ない。

狂ってもいないが普通でもない

狂気と正常とは、そもそも分かちがたいのであって、むしろ両極は往還して溶け合っていると考えるべきである。

パウロがテンカンではないかということであり、バイブルに現れるパウロの表現に、テンカンの要素が見られるということであったが、マホメットがテンカンらしいということは普通言われていることであり、狂信的世界はたしかに幻想の実在的確信を伴い、宗教家にテンカン患者がかなりいるのではないかと思われる節はある。

これが真実だとすれば、狂人(と思われる、あるいは見える人)が作り出した宗教に、どうして、正常な人の側が排除もせずむしろ共感して便乗し今日に至るという見方も可能であろう。

正常とは抑圧された状態

正常であろうとすることは疲れることである。サラリーマンなどという、完全なる型にハマった状態を長く続けていると、しばしば世界の果てまで逃走したいような心持ちになるのはそのためである。

抑圧を解放してはならないのだ。あらゆる抑圧を解放すれば、人間がどうなるか、分りきっている。色と慾。たゞ動物。それだけにきまっているのだ。

まともであること、普通であることは、よくも悪くもなんらかの我慢なくしてはあり得ないのである。

異常というスケープゴートを探して

正常であることが疲れることだとしても、臆病な我々はあくまでも普通であろうと頑張る。

しかし、正常とはどこまでも異常との対比、その距離によってしか規定し得ないものである。そのため、正常であろうとする我々は、常に異常なる存在を必要とする、もっと、欲するのである。

精神病者は自らの動物と闘い破れた敗残者であるかも知れないが、一般人は、自らの動物と闘い争うことを忘れ、恬として内省なく、動物の上に安住している人々である。  小林秀雄も言っていたが、ゴッホの方がよほど健全であり、精神病院の外の世界が、よほど奇怪なのではないか、と。これはゴッホ自身の説であるそうだ。僕も亦、そう思う。精神病院の外側の世界は、背徳的、犯罪的であり、奇怪千万である。  人間はいかにより良く、より正しく生きなければならないものであるか、そういう最も激しい祈念は、精神病院の中にあるようである。もしくは、より良く、より正しく生きようとする人々は精神病的であり、そうでない人々は、精神病的ではないが、犯罪者的なのである。

いつの世も猟奇的な事件というものがあって、そこには自ずと多大なる興味と関心が集まるものだが、その理由のひとつに、あからさまな異常を見聞きすることによって、自分の正常を確認できるという効能がある。

本当は、皆わかっているのではなかろうか。自分が正常であるかどうか、なんの保証も担保もないことに。

記事カテゴリー: art

ご支援のお願い

もし当ブログになんらかの価値を感じていただけましたら、以下のいずれかの方法でご支援いただけますと幸いです。

Amazonギフト券で支援する
→送信先 info@tomonishintaku.com

Amazonほしい物リストで支援する

PayPalで支援する(手数料の関係で300円~)

     

ブログ一覧

  • ブログ「むろん、どこにも行きたくない。」

    2007年より開始。実体験に基づいたノンフィクション的なエッセイを執筆。アクセス数も途切れず年々微増。不定期更新。

  • 英語日記ブログ「Really Diary」

    2019年より開始。もともと英語の勉強のために始めたが、今ではすっかり純粋な日記。呆れるほど普通の内容なので、新宅に興味がない人は読んで一切おもしろくない。

  • 音声ブログ「まだ、死んでない。」

    2020年より開始。ロスのホームレスとのアートプロジェクトでYouTubeに動画をアップしたところ、知人にトークが面白いと言われたことをきっかけにスタート。その後、死ぬまで毎日更新することとし、コンテンツ自体を現代アートとして継続中。

  • 読書記録

    2011年より開始。過去十年以上、幅広いジャンルの書籍を年間100冊以上読んでおり、読書家であることをアピールするために記録している。各記事は、自分のための備忘録程度の薄い内容。WEB関連の読書は合同会社シンタクのブログで記録中。

  関連記事

キュレーションの方法

どうも終始もやがかかったような内容で、伝わってくるものがあまりなかった。私の頭の ...

新装版 ミュージアムの思想

良書、だがすでに絶版。そのためくそ高い。私はヤフオクで見つけて5000円ほどで買 ...

デザイン/アート留学のすすめ

正直、読み通すのが非常にしんどいものがあった。内輪で盛り上がるバラエティのような ...

モチーフで読む美術史

実に勉強になった。いい本だった。特に「滝」についての言及があったのは大収穫。 【 ...

当サイト内の文章・画像等の内容の無断転載及び複製等の行為はご遠慮ください。

Unauthorized copying and replication of the contents of this site, text and images are strictly prohibited. All Rights Reserved.

Copyright © 2012-2024 Shintaku Tomoni. All Rights Reserved.