楽園のカンヴァス (原田 マハ/新潮社)

書籍楽園のカンヴァス(原田 マハ/新潮社)」の表紙画像

購入価格:984

評価:

この記事は約1分29秒で読めます

親は選べないとはよく言ったものである。一読して思うのは、最悪。フィクションではないかとさえ思ってしまう。

親は鏡

どんな親でも、子にとって親は鏡である。子は親を通してこの世界のなんたるかを知るのであって、それが歪んでいたり割れていたりすれば、子もまたそのように受け取るのは必然である。反面教師云々といった美談にできるのは、その先の、物心ついてから、もっと、ずいぶんと大人になってからの話である。

誰かに選ばれるということは
私にものすごい快感を与えた

虐待されてきた彼女は、男性に告白された時にこう感じたという。マザー・テレサの言葉を思い出す。「必要とされないこと、 愛されないこと、気遣われないことが 最大の貧困」。なんにつけても、貧困は渇望を生む。

愛のかたち

よくよく考えれば、愛は怖い。いや、人の好意というもの自体、とても恐ろしい。形もない。証拠もない。補償もない。しかしそれでも我々は、愛なくしては生きていけない。愛なんてとうそぶくのも、愛を必要とするからこそだろう。愛の反対は憎しみではなく無関心だと喝破したのもまたマザー・テレサ、その人である。

愛してるなら信じさせてよ!
不安にさせないでよ~!

愛の有無の不安にかられた著者の叫びに対する彼の返しが秀逸である。「じゃあもっと…俺を信じてください

それでも生きなければならない

この本は、とても胸に刺さるものがある。それは彼女の作画能力や構成力よりも、彼女自身の想いがのっているからではなかろうか

今ある感情を過去や理想に繋げないだけで
こんなにラクになれるなんて…

不肖アーティストとして、「想い」なんて言葉を使うのはどうかしていると自分でも思う。そう、作品がすべてだ。想いなどというものは、いっそノイズだ

凡百の作家は、この想いでもって作品を作り上げ、しかしその想いによって失敗する。想いは作家の目を曇らせるからだ。想いと冷徹な客観性が両立した時にだけ、佳作が生まれる

     

ブログ一覧

  関連記事

韓国は一個の哲学である―「理」と「気」の社会システム

韓国のことがわかった、ようなわからないような。 【オタク(韓国では「マニア」とか ...

話すための英文法 中級編 Part1―必ずものになる

昭和に書かれた本だけあって、昨今の甘言ばかり並べた英語本とは格が違う。冒頭に『各 ...

演技と演出

演劇も美術に役立ちそうだから読んでみるかと買ってみたが、これまたすばらしい本だっ ...

ハックルベリー・フィンのアメリカ―「自由」はどこにあるか

私としてはトムソーヤもハックルベリーもつまらなかったのだが、しかし、この解説的な ...

13億人のトイレ 下から見た経済大国インド

日本人にはトイレがない生活など考えられない。とはいえ、世界にはいまだトイレがない ...

当サイト内の文章・画像等の内容の無断転載及び複製等の行為はご遠慮ください。

Unauthorized copying and replication of the contents of this site, text and images are strictly prohibited. All Rights Reserved.

Copyright © 2012-2025 Shintaku Tomoni. All Rights Reserved.