子どもたちの階級闘争――ブロークン・ブリテンの無料託児所から (ブレイディみかこ/みすず書房)

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一般的に日本人がイギリスと聞いて思い浮かべるイメージは決して悪くない。貧しくもないし、悲しくもない。英国紳士なんて聞けば、自ずと貴族にも近いスマートな画が浮かんでくる。

しかし本書では我々のイメージにない、英国の負の側面のリアルが赤裸々に暴かれている。

私がかつてアメリカのロサンゼルスに移り住んでがっかりした感覚に近い。先進国の現実は、想像以上に貧しく、悲しい。

なんにつけても、メディアが報じるのは見栄えのする明るい側面ばかりである。知識人の定番の枕詞である「欧米では〜」という文句を鵜呑みにして欧米のシステムに追従するのではなく、もっと冷静に疑ってかかるべきだ。

貧困エリアにおける肥満している子どもの割合は、少年の場合は豊かな地域の三倍になり、少女の場合は二倍になる。「五年前に底辺託児所でのヴォランティアをやめて、豊かな地域の保育園に就職したとき、わたしはこの調査結果のようなことを肌で感じた。もちろんミドルクラスの親を持つ子どもたちの語彙は下層の子どもたちより驚くほど多かったし、数もきちんと数えられるが、そういう表面上の学習力より、一番驚いたのは手先の発達である。幼児期の脳の発達は手先の動きに関係しているというが、たとえばわたしはよく子どもたちと折り紙をする。保育園の三歳児は、底辺託児所の三歳児にはとても折れないような形を器用に折ることができたのである。

英国のバンクシーというグラフィティ・アーティストのイラストに、「Ignorance(無知)という液体の入ったフラスコをFear(怖れ)という炎で温めるとHate(憎悪)という液体が試験管の中に抽出できる」という実験図を描いたものがある (中略) この「ヘイト感情製造の構図」は、欧州人の移民に対する差別だけに当てはまるわけではない。移民のほうでも、行った先に住んでいる人々については無知なので、下手に恐怖心を煽られると、強いヘイト感情を抱くようになる。英国人とあまり触れ合ったことがない移民は、センセーショナルにタブロイド紙に書かれている下層民による犯罪や乱れきった日常生活など、ステレオタイプをそのまま鵜呑みにして必要以上にネガティヴな反応を示すことがある。

ケアシステム出身の若者たちの談話によれば、全員が平均して10回は里親を変更されており、これはたとえば六歳から16歳まで10年間英国のケアシステムの世話になった子がいるとすれば、毎年一度は里親が変わっていたということだ。

     

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