図解 カメラの歴史 ダゲールからデジカメの登場まで (神立尚紀/ブルーバックス)

書籍図解 カメラの歴史 ダゲールからデジカメの登場まで(神立尚紀/ブルーバックス)」の表紙画像

購入価格:991

評価:

この記事は約1分25秒で読めます

「すぐ役に立つことは、すぐ役に立たなくなる」とは、よく言ったものである。慶應義塾大学の塾長であった小泉信三の言葉だが、私の信条である。

カメラとは何か

簡単に今すぐプロみたいにうまく撮れるという類のハウツー本はごまんとあるが、カメラを始めるすべての人が最初の段階で読むべき本だと思う。いま自分が持っているカメラなるものが、いつ始まり、何がどうなって現代のような形になったのかという歴史的経緯が概観できる。すると、自分の持っているカメラが、先達の血と汗と涙の結晶というべき、感動的なモノにも思えてくる。

日本のカメラが花開く

「ニコン神話」のはじまりという章にある話には感銘を受けた。1950年、日本製のレンズがまだ評価されていない頃の話だ。ある夕暮れ時、日本の新製品のレンズだと言って、「ライフ」誌の写真家デビッド・ダグラス・ダンカン氏を数枚撮影した。

「日本製のゾナーレンズです」と説明すると、彼は小馬鹿にするように「ほほう、日本製のキャデラックはどこにあるだい」と笑った。後日、彼のもとにその時に取った写真が届けられた。その写真に彼は驚いた。夕暮れ時で、光量不足だと思っていたのにも関わらず、あまりにもクリアに写っていたからだ。

その時使われたレンズはニッコール85ミリF2だったが、彼は反駁する。「あれは黄昏どき、灯りをつけない状態だった。あんな暗がりで85ミリF2はあり得ないよ。(中略)50ミリF1.5だと信じている」と。

知らなければわからない話

このくだりは、カメラの絞りや露出を理解し始めた私にはなるほどと、深く感じ入るものがあった。私はひとり、声を出して唸っていた。絞りや露出を知らなければ、このやり取りの機微も理解できないに違いなく、知っているからこそおもしろいと思えたのである。

とまれ、本書には大学の授業などで使われてもおかしくないレベルの知識が満載されている。写真を志すすべての人におすすめしたい。

ご支援のお願い

もし当ブログになんらかの価値を感じていただけましたら、以下のいずれかの方法でご支援いただけますと幸いです。

Amazonギフト券で支援する
→送信先 info@tomonishintaku.com

Amazonほしい物リストで支援する

PayPalで支援する(手数料の関係で300円~)

     

ブログ一覧

  • ブログ「むろん、どこにも行きたくない。」

    2007年より開始。実体験に基づいたノンフィクション的なエッセイを執筆。アクセス数も途切れず年々微増。不定期更新。

  • 英語日記ブログ「Really Diary」

    2019年より開始。もともと英語の勉強のために始めたが、今ではすっかり純粋な日記。呆れるほど普通の内容なので、新宅に興味がない人は読んで一切おもしろくない。

  • 音声ブログ「まだ、死んでない。」

    2020年より開始。ロスのホームレスとのアートプロジェクトでYouTubeに動画をアップしたところ、知人にトークが面白いと言われたことをきっかけにスタート。その後、死ぬまで毎日更新することとし、コンテンツ自体を現代アートとして継続中。

  • 読書記録

    2011年より開始。過去十年以上、幅広いジャンルの書籍を年間100冊以上読んでおり、読書家であることをアピールするために記録している。各記事は、自分のための備忘録程度の薄い内容。WEB関連の読書は合同会社シンタクのブログで記録中。

  関連記事

連続殺人犯

殺人、拷問、そのほか一般的にグロとされているものに目がない人間なので読んだが、 ...

不可触民―もうひとつのインド

インドというと、ガンジーと神秘なイメージくらいしかなかったが、忘れてはならないの ...

「対テロ戦争」とイスラム世界

前半は個別具体的な事例が多すぎてついて行けなかったが、後半から俄然興味深くなった ...

日本人はなぜ無宗教なのか

実に読み甲斐のあった本。 後々までこの本に書かれていたことは覚えていて、いろいろ ...

当サイト内の文章・画像等の内容の無断転載及び複製等の行為はご遠慮ください。

Unauthorized copying and replication of the contents of this site, text and images are strictly prohibited. All Rights Reserved.

Copyright © 2012-2024 Shintaku Tomoni. All Rights Reserved.