フォン・ノイマンの哲学 人間のフリをした悪魔 (高橋 昌一郎/講談社)

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本書を一読すれば、とにもかくにも彼が桁違いの頭脳の持ち主で、天才という言葉では言い表せない人物であることが嫌というほどわかる。

彼がいなければコンピュータも原爆もなかったかもしれないのだが、しかし、そこに至る創造力やモチベーションが、一般的な大人からすると奇異に思われる。

どうやら彼にとっては、金や功名心などはどうでもよく、単に子供のような純粋さで、パズルよろしく知的遊戯をひたすらに楽しんだ結果、そういうものが出来上がったようにしか見えないのだ。

そもそもユダヤ人がヨーロッパで姓を名乗ることを許されたのは、16世紀である。ただし、彼らは自由に姓を選べたわけではなく、自然由来の姓を名乗るように強いられた歴史がある。「ノイマン(新しい人)」や「フリードマン(自由な人)」や「ゴールドマン(金のある人)」のように接尾辞「マン(mann)」の付く姓は、明らかにユダヤの出自を表している。

「ユダヤ人」とは、本人の信仰とは無関係に二親等まで遡る「血統」によって定義される。それには細かい規定があるのだが、要するに、両親あるいは祖父母の誰かがユダヤ教の共同体に所属していたら、その子どもや孫は「ユダヤ人」と認定され、「劣等民族」とみなされたのである。

テラーは、「超人的な新人類が生まれることがあるとしたら、その人々はジョン・フォン・ノイマンに似ているだろう」と述べている。 (中略) 「考えることを楽しめば、ますます脳が発達する。フォン・ノイマンは、自分の脳が機能することを楽しんでいたんだよ」 ノイマンと共に原爆を開発し、核反応理論でノーベル物理学賞を受賞したベーテは、「フォン・ノイマンの頭脳は、常軌を逸している。彼は、人間よりも進化した生物ではないか?」と、本気で考えたことが何度もあるという。

「我々が今生きている世界に責任を持つ必要はない」と言い放ったノイマンは、犠牲者に対する人道的感情とは無縁だった。あるいは、あえてそのような人間性に目を背けていたのかもしれない。彼が唯一、人間らしい姿を見せた記録として残っているのは、疲れ果てて自宅に戻った際、クララに「我々が今作っているのは怪物だ」と、動揺した姿を見せた一夜だけである。

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