フォン・ノイマンの哲学 人間のフリをした悪魔 (高橋 昌一郎/講談社)

購入価格:979円
評価:
この記事は約2分38秒で読めます
本書を一読すれば、とにもかくにも彼が桁違いの頭脳の持ち主で、天才という言葉では言い表せない人物であることが嫌というほどわかる。
彼がいなければコンピュータも原爆もなかったかもしれないのだが、しかし、そこに至る創造力やモチベーションが、一般的な大人からすると奇異に思われる。
どうやら彼にとっては、金や功名心などはどうでもよく、単に子供のような純粋さで、パズルよろしく知的遊戯をひたすらに楽しんだ結果、そういうものが出来上がったようにしか見えないのだ。
そもそもユダヤ人がヨーロッパで姓を名乗ることを許されたのは、16世紀である。ただし、彼らは自由に姓を選べたわけではなく、自然由来の姓を名乗るように強いられた歴史がある。「ノイマン(新しい人)」や「フリードマン(自由な人)」や「ゴールドマン(金のある人)」のように接尾辞「マン(mann)」の付く姓は、明らかにユダヤの出自を表している。
「ユダヤ人」とは、本人の信仰とは無関係に二親等まで遡る「血統」によって定義される。それには細かい規定があるのだが、要するに、両親あるいは祖父母の誰かがユダヤ教の共同体に所属していたら、その子どもや孫は「ユダヤ人」と認定され、「劣等民族」とみなされたのである。
テラーは、「超人的な新人類が生まれることがあるとしたら、その人々はジョン・フォン・ノイマンに似ているだろう」と述べている。 (中略) 「考えることを楽しめば、ますます脳が発達する。フォン・ノイマンは、自分の脳が機能することを楽しんでいたんだよ」 ノイマンと共に原爆を開発し、核反応理論でノーベル物理学賞を受賞したベーテは、「フォン・ノイマンの頭脳は、常軌を逸している。彼は、人間よりも進化した生物ではないか?」と、本気で考えたことが何度もあるという。
「我々が今生きている世界に責任を持つ必要はない」と言い放ったノイマンは、犠牲者に対する人道的感情とは無縁だった。あるいは、あえてそのような人間性に目を背けていたのかもしれない。彼が唯一、人間らしい姿を見せた記録として残っているのは、疲れ果てて自宅に戻った際、クララに「我々が今作っているのは怪物だ」と、動揺した姿を見せた一夜だけである。
出版社・編集者の皆様へ──商業出版のパートナーを探しています
*本ブログの連載記事「アメリカでホームレスとアートかハンバーガー」は、商業出版を前提に書き下ろしたものです。現在、出版してくださる出版社様を募集しております。ご興味をお持ちの方は、info@tomonishintaku.com までお気軽にご連絡ください。ブログ一覧
-
ブログ「むろん、どこにも行きたくない。」
2007年より開始。実体験に基づくノンフィクション的なエッセイを執筆。不定期更新。
-
英語日記ブログ「Really Diary」
2019年より開始。英語の純粋な日記。呆れるほど普通なので、新宅に興味がない人は読む必要なし。
-
音声ブログ「まだ、死んでない。」
2020年より開始。日々の出来事や、思ったこと感じたことを台本・編集なしで吐露。毎日更新。
関連記事
あした死ぬかもよ? 人生最後の日に笑って死ねる27の質問 名言セラピー
2021/04/09 book-review book, migrated-from-shintaku.co
自殺に殺人、輪廻に復活、そしてあの世――とにかく死にまつわることが好きだ。 ふだ ...
宗教常識の嘘
2014/06/04 book-review book, migrated-from-shintaku.co
わたしの定番ジャンルの宗教もの。国立駅前の品揃え乏しい本屋で300円で購入。まあ ...
アマゾンの倉庫で絶望し、ウーバーの車で発狂した~潜入・最低賃金労働の現場~
2019/07/17 book-review migrated-from-shintaku.co
わかりやすくアマゾンもウーバーも使いたくなくなってしまった。読んでいると、何もか ...
脱出老人 フィリピン移住に最後の人生を賭ける日本人たち
2021/09/08 book-review book, migrated-from-shintaku.co
下手な幸福論より、よほど人間の幸・不幸のなんたるかについて考えさせられるものがあ ...
平凡 (お風呂で読む文庫 95)
2014/06/25 book-review book, migrated-from-shintaku.co
読書会の課題図書。じつにおもしろかった。というか、相当に自分に似ていて、共感する ...