旅に出よう――世界にはいろんな生き方があふれてる (近藤 雄生/岩波書店)

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たまに「日本で絶望して自殺するくらいならインドでも行ったほうがいい」なんて乱暴な話を聞くが、本書を読むと、それは確かにその通りかもしれないと思う。

絶望するというのは、つまるところ究極的に視野を狭くして、針の先のような一点を世界のすべてだと思いこむことなのだ。

そうであればこそ、いっそ死んでもいいやというヤケクソでもなんでも外に出てみれば、是が非でも世界観が変わり人生が変わる。そしてもう二度と、その針先の矮小な一点を世界のすべてなどとは間違っても思えなくなる。

そして、そのように自己の世界観が変容した時、絶望が、自殺という行為がいかに難しいことであるかを痛感するのである。

「最近はあまり獲物が捕れなくなってしまったんです。ここ3年ほど、クジラの捕獲量も減っています」 5年前は1年間で49頭のマッコウクジラが捕れたけれど、昨年は23頭だったといいます。 (中略) 「しかし、その理由は私たちには分かりません」 (中略) ラマレラの村人たちがその状況に対して取れる術はほとんど何もありません。あるとすれば、この島に根付くキリストへ、日々、祈りを捧げることぐらいです。

エマーム・レザー廟の中では、女性は必ずチャドルを着なければなりません。そのためにぼくらも、事前に町の布屋さんにモトコのチャドルを買いにいきました。すると店の中にいた数人のチャドル姿の女性たちが、ぼくらを興味深そうに眺め、モトコがチャドルを選んでいると、その着方を親切に手ほどきしてくれます。そしてこのとき、そのうちのひとりがとったちょっとした行動がぼくの心にいつまでも残ることになりました。彼女は、「ほら、こうやって着るのよ」と、笑顔で自分のチャドルを開いて見せてくれたのです。厳しく身体を隠すイランの女性のチャドルの内部を見ることなど、考えてもいなかったため、ぼくは、はっとしてしまいました。そしてその中に彼女が着ていたのが、シーンズとセーターといった全く普通"の洋服だったことにもまた驚かされました。

最近の日本は、「人を見たら泥棒と思え」的な、互いに警戒し合う社会になっている気がするけれど、こうしてお互いに扉を開き合ってみると、世の中圧倒的にいい人が多いことを実感 できます。

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