オランダ語のしくみ (清水 誠/白水社)

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5年後にはオランダで永住権を得るために必要な市民化プログラムの試験を受けるつもりのため、2ヶ月ほど前からオランダ語の勉強をはじめた。
まったくの未知の言語であるオランダ語を学んでいると、私なんかでも、少なからず英語を勉強していたのだと思わざるを得ない(学生時代にまったく勉強しなかったので a と an の違いさえ知らなかったとはいえ)。
そもそも読めないし、1から10まですら満足に数えられない。しかし時間はまだ十分にあるので、幼稚園に戻った気持ちでひたむきに取り組みたい。
日本人のように勝手に名前を作り出すわけにはいきません。ヨーロッパでは、原則として人名はキリスト教の聖者の名前に限られるからです。そこで、言語ごとに微妙に異なる共通のファーストネームが発達しました。たとえば、典型的な男性名 Jan「ヤン」は、英語の John「ジョン」、ドイツ語の Johann「ヨハン」、フランス語の Jean「ジャン」にあたります。ほかにも、Hendrik「ヘンドリク」(英 Henry「ヘンリー」)、Willem「ヴィレム」(英 William「ウイリアム」)、Karel「カーレル」(英 Charles「チャールズ」)などがその例です。だれでも自分の子供はかわいいもので、悪魔にさらわれないようにと、Anne Maria Ursula Katharina Elisabeth... とやたらに聖者の名前を重ねることも稀ではありません。
1600年に大分の豊後に漂着し、日南国交の幕開けを告げたオランダの商船、De Liefdeは、日本語では「リーフデ号」と呼んでいます。ところが、この f は本来は澄んだ[フ]なのですが、後ろに濁った-de[デ]が続くために、これにつられて[ヴ]と濁ってしまうのです。ですから、正しくは「リーヴデ号」です(「愛」という意味です)。オランダ人を母親とするブリュッセル生まれのハリウッドの妖精、Audrey Hepburn も、本当は「ヘップバーン」ではありません。p が b の音になって、オランダ語的には「ヘビュルン」です。これは「ヘボン式」といわれるローマ字つづりの提唱者で、アメリカ人宣教師・医師の J.C.Hepburn と同姓なのです。
もっとも有名なオランダ人画家といえば、それはもちろん、ゴッホでしょう。
Dit is Vincent van Gogh.
これはヴィンセント・ヴァン・ゴッホです。この g の発音はオランダ語発音の最大の難関です。Gogh の発音は「ゴッホ」ではありません、しいていえば、[ホホ]です。ただし、日本語の「ハヒフヘホ」とは違うので、本書では「はひふへほ」とカナ表記し、[ほほ]と示します。驚いたことに、オランダ語には「ガギグゲゴ」の子音がないのです。日本語の「ホ]、つまり ho の h は、寒いときに手を温めるように、のどの奥から漏らす弱い音です。ところが、オランダ語の g は痰を切るように、舌で触るとやわらかい上あごの奥の部分を強くこすって出すのです。しかも、hier [ヒール]「ここ」と gier [ヒール]「ハゲタカ」はまったく別の語です。Van Gogh は、[ヴァン ほほ](ghはgの古いつづり)と発音するのです。
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