オランダ語のしくみ (清水 誠/白水社)
購入価格:696円
評価:
この記事は約2分30秒で読めます
5年後にはオランダで永住権を得るために必要な市民化プログラムの試験を受けるつもりのため、2ヶ月ほど前からオランダ語の勉強をはじめた。
まったくの未知の言語であるオランダ語を学んでいると、私なんかでも、少なからず英語を勉強していたのだと思わざるを得ない(学生時代にまったく勉強しなかったので a と an の違いさえ知らなかったとはいえ)。
そもそも読めないし、1から10まですら満足に数えられない。しかし時間はまだ十分にあるので、幼稚園に戻った気持ちでひたむきに取り組みたい。
日本人のように勝手に名前を作り出すわけにはいきません。ヨーロッパでは、原則として人名はキリスト教の聖者の名前に限られるからです。そこで、言語ごとに微妙に異なる共通のファーストネームが発達しました。たとえば、典型的な男性名 Jan「ヤン」は、英語の John「ジョン」、ドイツ語の Johann「ヨハン」、フランス語の Jean「ジャン」にあたります。ほかにも、Hendrik「ヘンドリク」(英 Henry「ヘンリー」)、Willem「ヴィレム」(英 William「ウイリアム」)、Karel「カーレル」(英 Charles「チャールズ」)などがその例です。だれでも自分の子供はかわいいもので、悪魔にさらわれないようにと、Anne Maria Ursula Katharina Elisabeth... とやたらに聖者の名前を重ねることも稀ではありません。
1600年に大分の豊後に漂着し、日南国交の幕開けを告げたオランダの商船、De Liefdeは、日本語では「リーフデ号」と呼んでいます。ところが、この f は本来は澄んだ[フ]なのですが、後ろに濁った-de[デ]が続くために、これにつられて[ヴ]と濁ってしまうのです。ですから、正しくは「リーヴデ号」です(「愛」という意味です)。オランダ人を母親とするブリュッセル生まれのハリウッドの妖精、Audrey Hepburn も、本当は「ヘップバーン」ではありません。p が b の音になって、オランダ語的には「ヘビュルン」です。これは「ヘボン式」といわれるローマ字つづりの提唱者で、アメリカ人宣教師・医師の J.C.Hepburn と同姓なのです。
もっとも有名なオランダ人画家といえば、それはもちろん、ゴッホでしょう。
Dit is Vincent van Gogh.
これはヴィンセント・ヴァン・ゴッホです。この g の発音はオランダ語発音の最大の難関です。Gogh の発音は「ゴッホ」ではありません、しいていえば、[ホホ]です。ただし、日本語の「ハヒフヘホ」とは違うので、本書では「はひふへほ」とカナ表記し、[ほほ]と示します。驚いたことに、オランダ語には「ガギグゲゴ」の子音がないのです。日本語の「ホ]、つまり ho の h は、寒いときに手を温めるように、のどの奥から漏らす弱い音です。ところが、オランダ語の g は痰を切るように、舌で触るとやわらかい上あごの奥の部分を強くこすって出すのです。しかも、hier [ヒール]「ここ」と gier [ヒール]「ハゲタカ」はまったく別の語です。Van Gogh は、[ヴァン ほほ](ghはgの古いつづり)と発音するのです。
- 前の記事
- 裏切られた発展―進歩の終わりと未来への共進化ビジョン
- 次の記事
- 現代パチンコ文化考
ご支援のお願い
もし当ブログになんらかの価値を感じていただけましたら、以下のいずれかの方法でご支援いただけますと幸いです。
Amazonギフト券で支援する
→送信先 info@tomonishintaku.com
ブログ一覧
-
ブログ「むろん、どこにも行きたくない。」
2007年より開始。実体験に基づいたノンフィクション的なエッセイを執筆。アクセス数も途切れず年々微増。不定期更新。
-
英語日記ブログ「Really Diary」
2019年より開始。もともと英語の勉強のために始めたが、今ではすっかり純粋な日記。呆れるほど普通の内容なので、新宅に興味がない人は読んで一切おもしろくない。
-
音声ブログ「まだ、死んでない。」
2020年より開始。ロスのホームレスとのアートプロジェクトでYouTubeに動画をアップしたところ、知人にトークが面白いと言われたことをきっかけにスタート。その後、死ぬまで毎日更新することとし、コンテンツ自体を現代アートとして継続中。
-
読書記録
2011年より開始。過去十年以上、幅広いジャンルの書籍を年間100冊以上読んでおり、読書家であることをアピールするために記録している。各記事は、自分のための備忘録程度の薄い内容。WEB関連の読書は合同会社シンタクのブログで記録中。
関連記事
ギリシア悲劇入門
2013/07/13 book-review migrated-from-shintaku.co
読者の単なる興味本位を超えて、犯罪・テロという切り口から、現代の状況を浮かび上が ...
なぜ女性は牛丼屋に行かないのか
2014/05/04 book-review book, migrated-from-shintaku.co
タイトルだけで買ったが、ほぼ牛丼に関係ない、が、非常に有用な内容だった。地味にオ ...
食欲の科学
2018/06/11 book-review book, migrated-from-shintaku.co
食欲を減退させる脳への器具埋め込みを行ったあと、性格が変わってしまったという下り ...
砂糖の世界史
2017/12/29 book-review book, migrated-from-shintaku.co
もはやジュニア新書ではない。イギリスの産業革命とそれと表裏の奴隷の歴史。考えさせ ...