死ぬ瞬間—死とその過程について (エリザベス キューブラー・ロス (著), 鈴木 晶 (翻訳)/中央公論新社)
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私は決してフェミニストではない。しかし、現代社会において、女性が割を食っているという事実は手放しで認める者である。
本書は、「女性のことを知っておいたほうがいい」と、パートナーに勧められて読んだ本である。
個人的にも性癖的にも、特に布ナプキンやパンティーライナーナプキンに興味があるわけではないが、本ならばどんな本でも必ず読み通すという私のモットーから読むことにした次第である。
男性は女性の性しか語らない
基本的に、男性が知っている、または知りたいと思う女性の性とは、セクシャルな部分だけである。
これを仮に、「消費対象的女性性」と呼びたい。
現代女性の生理の回数は昔の約9倍。
昔の女性と違って妊娠・授乳期間が極端に短いため、子どもが4〜6人いるような時代に比べて約9倍もの排卵と生理を繰り返します。
一方、上記のような女性性――仮に「機能的女性性」と呼ぶ――を、男性は忌避するし、ないがしろにするし、無視しようとする。なぜなら、それらは男性に快楽をもたらさないし、なによりめんどうだからだ。
そのため、なんだかんだマッチョな男性性が支配するこの世界において、必然的に女性は、そのぶんだけ無理をしなければならない。
社会的には一応、そんなときは無理をしなくてもいいというタテマエにはなっている。
しかし実際問題、評価者――その多くは男性――は、それらをモチベーションのような本人が自由にコントロール可能な問題に帰してしまう。
本来であれば頭痛や腹痛と同様、考慮されてしかるべき事由にも関わらず、である。
女性を女性として扱えない男性
男性は隙さえあれば、女性にルッキズム(外見至上主義)をふりかざし、性的対象としてジャッジしようとする。
幸か不幸か、そのお眼鏡にかなった者だけが、男性に優しく思いやりを発揮され、庇護され愛される女性として扱われる。他方、そうでない者は、女性としては扱われず、むげにされる。
女性には1か月のうち、週ごとにホルモンの変化があり、それを「4つの波」と呼びます。真逆の性質を持つ2つのホルモン (中略) オスを呼び込もうとする「美女ホルモン(卵胞ホルモン)」。もうひとつは、妊娠・出産に向けて身体作りをする「お母さんホルモン(黄体ホルモン)」 (中略) どんなに「今は彼氏いらない」「子どもは要らない」などと考えていても、肉体は忠実に、この役割をこなします。
そんな男性、今どきいない。そう反論する向きもあろう。しかし、バラエティ番組のひとつも見れば、そんな男性がいまだに幅をきかせ、むしろ人気を集めていることに気がつくはずだ。
女性が女性として扱われるのに、ただ女性であるだけでは十分ではないのだろうか。
神話のような女性性
すこし力み過ぎたかもしれない。繰り返しになるが、私は決してフェミニストではない。平塚らいてうよろしく「元始女性は太陽であった」なんて、まったく思わないタチである。
とはいえ、男性が改めるべきことは山ほどあることだけは確かだ。それを差し引いても、以下のようなくだりは、ほとんど女性を神話化、もっと戯画化しているようで、鼻白んでしまう。
生理は癒やしのリトリート期間
生理は本来、女性が一番幸せな期間かもしれません。なぜなら身体が自然にデトックスしてくれる (中略)
生理は至福の美容ウィーク
生理は身体も心もデトックスできる天然エステ。 (中略)
宇宙の波に逆らわない
身体……、特に生理は月の満ち欠けに対応すると言われます。
生理が女性にとって大切なことだというのは理解できる。しかし、ここまでくるとほとんどカルトである。
このような表現では、結局のところ『男性に女性はわからない=女性に男性はわからない』という対立構造を生み出すだけなのではないかという気がする。
どんな崇高な理念も、過激になれば排他性を帯びるものだ。もっとナチュラルに、女性と男性がいる。それ以上でも以下でもない。そんな世界になればいい、と思う。
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