天才 (宮城 音弥/岩波書店)

購入価格: 不明
評価:
この記事は約1分30秒で読めます
白人女性とまぐわう中で、自分の肌の黄色い醜さ、白い肌を這う虫にようなおぞましさを感じる男性のくだりは非常に考えさせられるものがあった。
いわゆるレイシズムというのは、理屈でも理性でもなく感情の領域で、その感情をコントロールするのは紳士・淑女のたしなみの領域に留まり続けるのではないか。つまり、永遠に人種差別的感情というものが消え去ることはなく、ちょっと酔ったり、うっかりすると、すぐに顔を出してしまう類のもの、という。
あの女たちにとって皮膚が黒いということは、たんに黒いということではなかった。 (中略) 黒は罪の色なのである。 (中略) 白人たちのすることは、どんなことでも善であり、神聖なのだ。
冒頭には、ヨハネの默示録が3章15〜16節が引用されている。
われ汝の行爲を知る、なんぢは冷かにもあらず熱きにもあらず、我はむしろ汝が冷かならんか、熱からんかを願ふ。
かく熱きにもあらず、冷かにもあらず、ただ微温きが故に、我なんぢを我が口より吐き出さん
引用元: https://ja.wikisource.org/wiki/ヨハネの默示録(文語訳)
それは象徴的な意味であって、以下のように解説されている。
アジヤの有色人種でありながら、政治的、社会的には福澤諭吉の「脱亜入欧」となり、文化的には盲目的なまでの西洋憧憬・賛美を押し進めてきた近代日本。それをもっとも端的に言い表せば、「ヨーロッパでもありえず、反ヨーロッパでもありえぬ汎神論的位相の、極東の島国。そのような複雑さゆえに、本当の意味では世界から捨てられている孤児日本
ポーランドの収容所では捕虜たちに塩分を与えなかったという事実がそれだ。烈しい強制労働につかれた人間が塩を摂らねば、次第に衰弱していく、やがては疲労死をする。疲労死はおもてむき虐殺ではなく国際法上病死と宣言することができる。のみならず、この方法は一挙に大量の人間を死亡せしめるのに手間どらない。
- 前の記事
- 人生の暗号—あなたを変えるシグナルがある
- 次の記事
- 芸術実行犯
ご支援のお願い
もし当ブログになんらかの価値を感じていただけましたら、以下のいずれかの方法でご支援いただけますと幸いです。
Amazonギフト券で支援する
→送信先 info@tomonishintaku.com
ブログ一覧
-
ブログ「むろん、どこにも行きたくない。」
2007年より開始。実体験に基づいたノンフィクション的なエッセイを執筆。アクセス数も途切れず年々微増。不定期更新。
-
英語日記ブログ「Really Diary」
2019年より開始。もともと英語の勉強のために始めたが、今ではすっかり純粋な日記。呆れるほど普通の内容なので、新宅に興味がない人は読んで一切おもしろくない。
-
音声ブログ「まだ、死んでない。」
2020年より開始。ロスのホームレスとのアートプロジェクトでYouTubeに動画をアップしたところ、知人にトークが面白いと言われたことをきっかけにスタート。その後、死ぬまで毎日更新することとし、コンテンツ自体を現代アートとして継続中。
関連記事
世界のエリートはなぜ「美意識」を鍛えるのか? 経営における「アート」と「サイエンス」
2018/07/05 book-review book, migrated-from-shintaku.co
書籍名に胡散臭さを感じなくもないが、内容は実にまともで有益であった。ざっくりまと ...
文系と理系はなぜ分かれたのか
2019/08/19 book-review migrated-from-shintaku.co
同僚に借りた本。今の自分の関心ではなく、あまり刺さらなかったが、「儲かる理系・儲 ...
江戸の大普請 徳川都市計画の詩学
2013/04/21 book-review migrated-from-shintaku.co
私を含め多くの日本人は、鎖国には外国排除、外国人許すまじというような強いイメージ ...
イスラーム 生と死と聖戦
2017/08/31 book-review book, migrated-from-shintaku.co, religion
この著者のおかげで、イスラムに対する味方が変わってきた。少なくとも現代、イスラム ...
「賭け」と宗教―あきらめ哲学とデタラメ精神
2021/05/02 book-review book, migrated-from-shintaku.co
ギャンブルをやる人はどうも程度が低い人と断じられてしまう昨今であるが、敬愛するド ...