新訂 福翁自伝 (福沢 諭吉 (著), 富田 正文 (著) /岩波書店)

書籍新訂 福翁自伝(福沢 諭吉  (著), 富田 正文 (著) /岩波書店)」の表紙画像

購入価格:1036

評価:

この記事は約2分51秒で読めます

お札にもなるくらいの人物であるので、もっと典型的なエライ人かと思っていたが、違う。

アンチヒーローを気取るならともかく、幼少の時分より酒が好きでいつも飲みたくてたまらないなんていうことをわざわざ自伝で告白する人間も珍しい。

随所で感じられることだが、福沢諭吉のキャラクターの本質は、自分の信念に従い、決して時勢や他人に流されない、ブレない図太すぎるほどの芯であろう。

ここ数年、毎朝「学問のすすめ」をバイブルとして読んでいる自分としては、やはり尊敬に値する人物だという思いを深くした次第。

絨毯が敷き詰めてあるその絨毯はどんな物かというと、まず日本で言えばよほどの贅沢者が一寸四方幾干という金を出して買うて、紙入れにするとか莨(たばこ)入れにするとかいうようなソンナ珍しい品物を、八畳も十畳も恐ろしい広い所に敷き詰めてあって、その上を靴で歩くとは、さて途方もないことだと実に驚いた。けれどもアメリカ人が往来を歩いた靴のままで颯々と上がるから、此方も麻裏草履でその上に上がった。上がると突然酒が出る。徳利の口をあけると恐ろしい音がして、まず変なことだと思うたのはシャンパンだ。そのコップの中に何か浮いているのもわからない。三、四月暖気の時節に氷があろうとは思いも寄らぬ話で、ズーッと銘々の前にコップが並んで、その酒を飲む時の有様を申せば、列座の日本人中で、まずコップに浮いているものを口の中に入れて、胆を潰して吹き出す者もあれば、口から出さずにガリガリ嚙む者もあるというような訳けで、ようやく氷が入っているということがわかった。

およそ人の志は、その身の成り行き次第に由って大きくもなりまた小さくもなるもので、子供の時に何を言おうと何を行おうと、その言行が必ずしも生涯の抵当になるものではない、ただ先天の遺伝、現在の教育に従って、根気よく勉めて迷わぬ者が勝を占めることでしょう。

政府に依りすがる気もない、役人たちに頼む気もない。貧乏すれば金を使わない、金が出来れば自分の勝手に使う。人に交わるには出来るだけの誠を尽して交わる、ソレデモ忌と言えば交わってくれなくても宜しい。客を招待すれば此方の家風の通りに心を用いて応する、その風が嫌いなら来てくれなくても苦しうない。此方の身にかなうだけを尽して、ソレカラ上は先方の領分だ。誉めるなり譏るなり喜ぶなり怒るなり勝手次第にしろ。誉められてさまで歓びもせず、譏られてさまで腹も立てず、いよいよ気が合わねば遠くに離れて付き合わぬばかりだ。

     

ブログ一覧

  関連記事

未来のお金の稼ぎ方 お金が増えれば人生は変わる

個人的には知っていることばかりで、あまり得るところがなかった。 「未来のお金の稼 ...

朝ごとに デイリー・グレース・シリーズ

私は2018年にシンガポールでカトリックの洗礼を受けて以来、毎朝聖書を読んでは祈 ...

新・投資信託にだまされるな! ---買うべき投信、買ってはいけない投信

素人であればあるほど、どこかに資産運用の秘密があって、それを誰かが知っているもの ...

原発はいらない

2022/03/22   政治・社会, 読書記録

コロナや戦争でもはや忘れ去られてしまっていると言っても過言ではない原発問題である ...

無名の人生

人生も折り返し地点を過ぎ、振り返れば名誉欲の追求に汲々としてきた我が人生だが、い ...

当サイト内の文章・画像等の内容の無断転載及び複製等の行為はご遠慮ください。

Unauthorized copying and replication of the contents of this site, text and images are strictly prohibited. All Rights Reserved.

Copyright © 2012-2025 Shintaku Tomoni. All Rights Reserved.