スマホ脳 (アンデシュ・ハンセン (著), 久山葉子 (翻訳) /新潮社)
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今日、スマホは生活の一部というか、すべてになっているような気さえする。
どこに行っても、スマホをいじっている人がそこここにいる。
むろん、各々がやっていることは、ゲーム、SNS、株価のチェック、あるいはスキマ時間を使った勉強など、選択肢はほとんど無限である。
しかし、たとえどんなに有益なことをしているとしても、そこに少なからず病的なものを感じてしまうのは、私だけだろうか。
スマホに奪われた何か
歴史をひもとけば、今日のインターネットはモールスの電信にまで遡ることができる。
そこから、電話、FAX、携帯電話、スマホと発展してゆくわけだが、往々にして我々はテクノロジーによって得られるもののことばかりを強調する。
私たちは1日に2600回以上スマホを触り、平均して10分に一度スマホを手に取っている。起きている間ずっと。いや、起きている時だけでは足りないようで、3人に1人が(18~24歳では半数が)夜中にも少なくとも1回はスマホをチェックするという。
この異常なスマホとの関係は、どう控えめに考えても我々から何か大切なものを奪っている。
進化していない人間
我々の心身はサバンナを走り回っていた時代からまったく進歩していない。むしろ同じである。つまり、テクノロジーの進歩と使用する側の人間との歩調は必ず乖離する。
常に「闘争か逃走か」という局面に立たされていると、闘争と逃走以外のことをすべて放棄してしまうのだ。脳にしてみれば、こういうことだ。
・睡眠──後回しにしよう
・消化──後回しにしよう
・繁殖行為──後回しにしよう
ある程度の期間ストレスを受け続けたことのある人なら、経験があるのではないだろうか。お腹の調子が悪くなったり、吐き気がしたり、不眠や性欲低下に苦しんだりしたことが。実はそういう人が、多すぎるくらいいるはずだ。
スマホに一日中「気を取られている」状態は、常に周囲を警戒しながら森を進む狩人のような緊張状態と変わらないのである。それが毎日続けば疲弊して当然である。
自然に帰れ的な
暴力的なテクノロジーの発展にくらべて、我々の脳みそ、肉体はあまりにも素朴だ。
思うに、テクノロジーは人間生活を侵食しているというか、攻撃し始めているのではないか。
矛盾を理解しようとする過程で生まれた。なぜこれほど多くの人が、物質的には恵まれているのに、不安を感じているのだろうか。今までになく他人と接続しているのに、なぜ孤独を感じるのか。それが次第にわかってきた。答えの一部は、今、私たちが暮らす世界が人間にとって非常に異質なものだという事実だ。このミスマッチ、つまり、私たちを取り巻く環境と、人間の進化の結果が合っていないことが、私たちの心に影響を及ぼしているのだ。自動車や電気やスマホは、あなたや私にとってごく自然な存在だ。それらがない世界なんて、今では考えられない。しかし今のこの社会は、人間の歴史のほんの一瞬にすぎない。地球上に現れてから99・9%の時間を、人間は狩猟と採集をして暮らしてきた。私たちの脳は、今でも当時の生活様式に最適化されている。脳はこの1万年変化していない──それが現実なのだ。生物学的に見ると、あなたの脳はまだサバンナで暮らしている。
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