しぐさから読みとく 日本人の不思議 (素朴な疑問探究会/河出書房新社)

書籍しぐさから読みとく 日本人の不思議(素朴な疑問探究会/河出書房新社)」の表紙画像

購入価格: Kindle Unlimited(0円)

評価:

この記事は約2分32秒で読めます

1960年発行の古書であるが、内容はむしろ斬新である。この著者はとにかく目の付け所が素晴らしい。肩書としては東京出身の建築家で随筆家とのことだが、有り余る才能を感じる。

台所で食物をこしらえてこれを食い、消化器の末端からこれを便所へ排泄する、といった順序を、私たちは毎日繰り返しているわけである。してみると人間というものは、建築的にいえば、台所を便所をつながく一種の管みたいなもので、私たちはこの管を維持するために、毎日あくせく働いていることになる。

時代を感じる一冊である。電話でわかりにくいことを表現する際の引き合い『燐寸のマ、煙草のタ』くらいならご愛嬌だが、

「聾のツ、盲のメ、跛のチ」

最後のなど、今日で難読漢字もいいところである。ちなみにこれはそれぞれ、『聾=ツンボ(耳の不自由な方)』『盲=メクラ(視覚の不自由な方)』『跛=チンバ(足の不自由な方)』と読む。第二次世界大戦でフィリピンに行った私の祖父などはこの手の言葉を日常的に口にしていたものが、もちろん今日では放送禁止用語である。

「日本人は何しろ、公衆道徳が低いから困ったもんだ。外国人に見られても恥しい。」といったことがよく言われる。オリンピックを控えて、この議論がまたひとしきりはやることだろう。

テレビを買っても洗濯機やラジオを買っても、すべてがアフター・サービス付で、ちょっとでも故障や不具合があれば、それこそ電話一本ですぐに直しに来てくれる。これが気に食わない。何かの商品をお客に売るということは、私なんか技術者から見れば、売った時が勝負であって、試験で言えば答案を出してしまったのと同じじゃないかと考える。 (中略) いったん売った品物を、買った人の家まで行ってネジをしめたり、コードを取替えたりすることは、何だか
ひどくいけない、恥しいことではないかと思う。

     

ブログ一覧

  関連記事

死ぬの大好き

まずタイトルがいい。相変わらずの山本先生。人間、死ぬのが大好きでありたいものであ ...

英文法の魅力 - 日本人の知っておきたい105のコツ

英語関連の本しか読んでない日々は続く。

修業論

「先生はえらい」を読んで以来、好き。著者の「嫌なことが我慢出来ない」という性格が ...

食の戦争 米国の罠に落ちる日本

TPPとかふーんって感じだったが、その選択がいかに重大事だったかを理解した。しか ...

日本のシンガポール占領―証言=「昭南島」の三年半

私が今読むべき、マストな本だった。日本からシンガポール、そしてアジアにとってのヒ ...

当サイト内の文章・画像等の内容の無断転載及び複製等の行為はご遠慮ください。

Unauthorized copying and replication of the contents of this site, text and images are strictly prohibited. All Rights Reserved.

Copyright © 2012-2025 Shintaku Tomoni. All Rights Reserved.