原爆に夫を奪われて 広島の農婦たちの証言 (神田 三亀男/岩波書店)

購入価格: 不明
評価:
この記事は約2分9秒で読めます
昨日のブログにも書いたが、これまた日本国民全員が読むべき本。
最近思うのだが、8月6日は祝日にしたほうがいいと思う。そしてその日は日本国民全員になんらかの平和教育を行うことを義務付ける。
本気でそうしたほうがいいと思う。まあ、そう思う続きについては『きみは「ピカゴケ」を知っているか?(「原爆に夫を奪われて—広島の農婦たちの証言」を読んで)』にて、また。
以下、感慨深かった箇所をご紹介。
主人に何一つ買うてもろうたことはない。酒代に使うて、買うてくれる金もなかったんじゃろうてえ。いわりゃせんが、わたしゃなんべんほぼろを売った(実家へ帰った)かわからんよの。世の中いうもんはおかしいもんで、主人が人の世話をようしとったけえ、わたしが後家になってから、近所の人からよう助けてもろうた。何が幸せかわからんよの。
だいたいは嫁に行きとうのうての、祝言の前の晩も蛍を取りにいくいうて家を出ようとしたら、母親にひどう怒られました。だれでも、いざ嫁に行くときゃ、行きたいような、行きとうないようなもんよの。あんたあ男じゃけえ、わかるまあがの。
仏壇の前に(死んだ)主人を寝せて、お通夜をしたんよの。焼けただれた皮膚から、それはわけのわからん臭いにおいがしておりましたで……。あの独特のにおいですよ。敵機の来襲をおそれて暗うした電灯の下で、おばあさん(しゅうとめ)と二人でお経を唱えました。夜もふけて休む支度にかかろうとしたとき、八十のおばあさんが、「今夜は、わしが辰(たつ)と寝てやろう、最後のことじゃけえ」こういうて、おばあさんは主人のそばへ寝せてくれというのです。わたしは思いもつかなんだことを、おばあさんはいったのです。一つの蚊帳の中に、おばあさんは主人と枕を並べて寝てでした。わたしは蚊帳をつりながら、親子の愛情いうものの深いことに頭が下がりました。ずいぶん臭かったじゃろう。ひどい、それはにおいじゃったけえ。それのにおばあさんは、一晩ことりともいわさず、主人の死体と寝てくれられました。
終戦後の百姓は始末(質素)な暮らしでした。ようあのころをしのいだもんじゃと、このごろしきりに思うことがあります。あまりにも今の暮らしが、なにかにつけて満足ですけえ、よけえ、終戦後の苦しかったことが思われますのじゃ。そして、今にときおり、手ごたえに思うのは、生きて戻った(原爆で焼けただれて瀕死の)主人を戸板(といた)で、息子と家まで運んだ折の重たかったことです。原爆に焼かれてどれだけ苦しかったことか。その苦しい思いが、目方にもなったのじゃろうか。それで、あがあに重たかったのじゃろうかと、考えたりしとります。むごい目におうたものだけの業のような思い出ですよの。
月並みだが、ほんとうに胸がつまる。感慨深いどころの話ではない。
とにかくは、戦争をしない、もう絶対に戦争をしないことが、我々の責務だろうと、ぼくは心から思うのだ。
- 前の記事
- 環境保護運動はどこが間違っているのか
- 次の記事
- 「道徳」という土なくして「経済」の花は咲かず
出版社・編集者の皆様へ──商業出版のパートナーを探しています
*本ブログの連載記事「アメリカでホームレスとアートかハンバーガー」は、商業出版を前提に書き下ろしたものです。現在、出版してくださる出版社様を募集しております。ご興味をお持ちの方は、info@tomonishintaku.com までお気軽にご連絡ください。ご支援のお願い
もし当ブログになんらかの価値を感じていただけましたら、以下のいずれかの方法でご支援いただけますと幸いです。
Amazonギフト券で支援する
→送信先 info@tomonishintaku.com
ブログ一覧
-
ブログ「むろん、どこにも行きたくない。」
2007年より開始。実体験に基づいたノンフィクション的なエッセイを執筆。アクセス数も途切れず年々微増。不定期更新。
-
英語日記ブログ「Really Diary」
2019年より開始。もともと英語の勉強のために始めたが、今ではすっかり純粋な日記。呆れるほど普通の内容なので、新宅に興味がない人は読んでも一切おもしろくない。
-
音声ブログ「まだ、死んでない。」
2020年より開始。日々の出来事や、思ったこと感じたことをとりとめもなく吐露。死ぬまで毎日更新することとし、コンテンツ自体を現代アートとして継続中。
関連記事
ドイツ語のすすめ
2021/10/12 book-review book, migrated-from-shintaku.co
何かの本で、何十ヶ国語を操る方が「すべての言語は擬態語である」と言っていたのを思 ...
スターリン - 「非道の独裁者」の実像
2019/02/16 book-review migrated-from-shintaku.co
社会主義について知りたくて手に取ったが、タイトル通りスターリンその人の実像に迫る ...
原始仏典
2018/12/31 book-review book, migrated-from-shintaku.co, religion
今年最後の読了。『「生を喜ばず、死を喜ばず、生を悲しまず、死を悲しまず」という淡 ...
「おろかもの」の正義論
2012/07/01 book-review migrated-from-shintaku.co
いくつか考えさせられるところはあったが、全体的にどうも机上の空論的な感じがしてし ...
現代漫画〈第2期 11〉戦争漫画傑作集
2013/12/17 book-review migrated-from-shintaku.co
本書の続編に位置づけられる「ホモ・デウス」を先に読んでいたが、これまた人間やめた ...