原爆に夫を奪われて 広島の農婦たちの証言 (神田 三亀男/岩波書店)
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昨日のブログにも書いたが、これまた日本国民全員が読むべき本。
最近思うのだが、8月6日は祝日にしたほうがいいと思う。そしてその日は日本国民全員になんらかの平和教育を行うことを義務付ける。
本気でそうしたほうがいいと思う。まあ、そう思う続きについては『きみは「ピカゴケ」を知っているか?(「原爆に夫を奪われて—広島の農婦たちの証言」を読んで)』にて、また。
以下、感慨深かった箇所をご紹介。
主人に何一つ買うてもろうたことはない。酒代に使うて、買うてくれる金もなかったんじゃろうてえ。いわりゃせんが、わたしゃなんべんほぼろを売った(実家へ帰った)かわからんよの。世の中いうもんはおかしいもんで、主人が人の世話をようしとったけえ、わたしが後家になってから、近所の人からよう助けてもろうた。何が幸せかわからんよの。
だいたいは嫁に行きとうのうての、祝言の前の晩も蛍を取りにいくいうて家を出ようとしたら、母親にひどう怒られました。だれでも、いざ嫁に行くときゃ、行きたいような、行きとうないようなもんよの。あんたあ男じゃけえ、わかるまあがの。
仏壇の前に(死んだ)主人を寝せて、お通夜をしたんよの。焼けただれた皮膚から、それはわけのわからん臭いにおいがしておりましたで……。あの独特のにおいですよ。敵機の来襲をおそれて暗うした電灯の下で、おばあさん(しゅうとめ)と二人でお経を唱えました。夜もふけて休む支度にかかろうとしたとき、八十のおばあさんが、「今夜は、わしが辰(たつ)と寝てやろう、最後のことじゃけえ」こういうて、おばあさんは主人のそばへ寝せてくれというのです。わたしは思いもつかなんだことを、おばあさんはいったのです。一つの蚊帳の中に、おばあさんは主人と枕を並べて寝てでした。わたしは蚊帳をつりながら、親子の愛情いうものの深いことに頭が下がりました。ずいぶん臭かったじゃろう。ひどい、それはにおいじゃったけえ。それのにおばあさんは、一晩ことりともいわさず、主人の死体と寝てくれられました。
終戦後の百姓は始末(質素)な暮らしでした。ようあのころをしのいだもんじゃと、このごろしきりに思うことがあります。あまりにも今の暮らしが、なにかにつけて満足ですけえ、よけえ、終戦後の苦しかったことが思われますのじゃ。そして、今にときおり、手ごたえに思うのは、生きて戻った(原爆で焼けただれて瀕死の)主人を戸板(といた)で、息子と家まで運んだ折の重たかったことです。原爆に焼かれてどれだけ苦しかったことか。その苦しい思いが、目方にもなったのじゃろうか。それで、あがあに重たかったのじゃろうかと、考えたりしとります。むごい目におうたものだけの業のような思い出ですよの。
月並みだが、ほんとうに胸がつまる。感慨深いどころの話ではない。
とにかくは、戦争をしない、もう絶対に戦争をしないことが、我々の責務だろうと、ぼくは心から思うのだ。
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