言霊 なぜ日本に本当の自由がないのか (井沢元彦/祥伝社)

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言霊(ことだま)なんて馬鹿みたいな話ではあるが、いまだにこれほど強い影響力を持っているとは思わなかった。ということがつくづくよくわかる本。

言葉は確かに大事だが、やはり一番大事なのは現実であり実態だろう。

実態を伴わないものは、まさしく机上の空論という。

日本において言霊が重要視されていることが顕著に現れているのは、言い換えである。

たとえば結婚式の披露宴では、式の終わりを「お開き」という。絶対に終わりとはいわない。なぜか。縁起が悪いからである。他の場面でも、これにてお開きなどというが、そもそもこの言葉の由来は結婚式からきている。

切れる、別れる、なども絶対に言わない。当たり前だろうと思われるかもしれないが、これこそ言霊が現代でも生きている証である。

そんな「縁起でもない」ことを言うと、それが現実に起こってしまうと考えいるのである。

本当は切れる、終わる、別れるなど、なんと言おうが、実際にそうなるか否かは本人たちの問題である。

にも関わらず、頑なに言葉の言い換えをして、悪い言霊を排除する。現実にはなんの対処もせず、ただ表面的な言葉を排除することによって、なんとなく、それですべてうまくいったような気になってしまう。

この最たるものは戦争のときの「敵性語の排除」である。

これは野球の言い換えが有名だろう。セーフはよし、アウトはだめなど、鬼畜米英の言葉を徹底的に排除した。

よくよくかんがえれば、こんなおかしな話はない。

アウトやファウルという言葉を使おうが使うまいが、現実は何も変わらない。むしろ、すべての戦いは、勝つにはまず相手を知ることから始まるのは常識であろう。

にも関わらず、表面上の言葉だけを排除し、そしてそれで鬼畜米英を一掃したような気になっている。

全滅を玉砕、敗退を転進と言い換えたのも、そんなまやかしのひとつである。

こんなまやかしはいまでも至るところである。公正真実を伝えるべき新聞でさえ、値上げのことを改定と言い換えたりする。改定は値下げの場合も含むので、正確な言葉ではない。しかし改定といって、うやむやにしてしまう。

言葉が足りないが、ぜひこの本はできるだけ多くの人に読んでほしい。

言葉の表面だけを見てなんとなく納得するのではなく、ちゃんと実態を見る、見えるようにすべきだと、強く思う。

     

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