ヒトと文明──狩猟採集民から現代を見る (尾本 恵市/筑摩書房)

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人間の生み出すテクノロジーの進歩はすさまじいが、その一方、人類それ自体はアウストラロピテクスの時代(400〜200万年前)から何ら変わっていない、というのはよく言われる話である。

毛皮を捨てた早期人類にとっては、太陽光線中の紫外線から身を守ることが試練となった。その解決法は、紫外線を通さない黒い皮膚をもつことである。皮膚の表面にはメラニン色素を含む細胞が分布するが、その密度が高いほど皮膚は濃色となり、紫外線に対するフィルターとなる。

「なぜヒトには老人がいるのか?」これはヒトの本性の理解にとって重要な疑問である。その説明として、アメリカの人類学者クリスティン・ホークスら(1998)の提唱した「おばあさん仮説」が有名である。世界中の多くの社会で、おばあさん(祖母)が母親の出産や育児を助けることはよく知られている。おばあさんは、自分では子どもを産まないが、自分の娘や親戚のお母さんを助けることによって、生存にとって非常に重要な役割を果たしている。すなわち、おばあさんの存在は、ヒトの集団の「包括適応度」(遺伝子レベルでの成功の尺度)を高めるのに役立つために進化した、という仮説である。

以下はアイヌ初の国会議員(1994年から1998年まで参議院議員)萱野かやの茂しげる氏の言葉。かっこいい、としか言いようがない。

「北海道で、われわれアイヌは長い間、自然の利子で食べさせてもらっていた。ところが、あるとき和人がやってきて、元本を食い尽くしてしまった」。 これは、現代文明下の環境問題を見事に言い当てている。一九九八年、彼は国会議員任期満了に伴い、惜しまれて政界を引退したが、その時残した言葉は「狩猟民は、足元が暗くなる前に家に帰る」である。真っ暗になっても、なお権力にしがみつく輩に聞かせたい言葉である。

     

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