日本人のための声がよくなる「舌力」のつくり方 声のプロが教える正しい「舌の強化法」 (篠原さなえ/講談社)

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先週から、音声で簡単な日記をつけるようになった(拙英語日記 Really Diary参照)。それを毎日聞いていて、気がついた。私は滑舌が悪い。声もはっきりしない。それで少しでも改善したいと思い手にとったのが本書である。

問題は舌か

滑舌とか声質と聞くと、たぶん、ふつうは喉のことを考えると思う。しかし、問題はどうやら舌にある。

舌というものは本来、口を閉じているときは、先端は上の歯の裏あたりにつき、そのまま喉のすぐ近くまで、全体がペタッと上顎についているのが正しい状態です。

近年、舌が上顎につかずに、常に下顎の方にべたっと寝ている状態になっている人が多いという。私は早速ぼうっとしている時に何度か自分の舌の状態を確認してみたが、どうやら問題なさそうだった。とまれ、まずは一度チェックしてみよう。

舌の話だけではない

本書では、舌の話もさることながら、言葉のアクセントや、日本語の発声の特徴や構造にまで踏み込んでいる。それに付随して、舌のトレーニング方法が様々紹介されているのだが、わざわざ本書を購入しなくとも、意識して日に何度か、舌をぐるぐるぐねぐね動かせばそれでよいのではないかと、私は思う。

要は、現代人は歩かなくなったとかいう話と同じである。柔らかいものばかり食べるようになった我々は、舌の動きが絶対的に足りず、舌が弱っているという話だと理解すればよい。

みなさんは子供の頃、友だちの家の前で、 「や~ま~だくん、あ~そびましょぉ」などと言って誘い出したりしませんでしたか?

確認はしていないが、著者の年齢が知れる。もういい歳である私はしていたが、昨今、このようなアポ無し訪問は絶えてなくなったのではなかろうか。

舌よりも人間性

延々と舌のあれこれについて述べた挙げ句、最後は哲学的とも思える話に行き着いた。むしろそこが一番興味深いと思ったのは、私だけだろうか。

動きや音に「揺らぎ」という表現が入ると、感情豊かに感じられるのはなぜでしょうか。それは結局のところ、データ量の多さということではないかと考えられます。

この前、たまたまデータ化の意味について考えていたので、妙に腑に落ちるものがあった。データ化とは、よくも悪くも省略なのである。

データ化で失われる情報

たとえば書類のスキャンひとつ取ってもそうだ。スキャンしてデータ、数字の羅列になれば、完全に情報が保存されたと考える人は多いだろうが、違う。

あくまでも保存されたのは表面の見た目だけであって、紙の重さ、厚み、質感、よれ、しわ、匂い、その他もろもろの情報は、もちろん保存されていない。たった一枚の紙でさえも、仮にそれらすべての情報を記録しようと思えば、ゆうに1TBくらいは超えてくるだろう。

豊かさとは情報量の多さ

むろん、そんな情報は必要ないと言われるかもしれない。しかし、そのような一般に切り捨てられて顧みられない情報こそが、先に引用した「揺らぎ」の本質であって、そこにこそ豊かさが宿るのである。

情報の要・不要を判断するのは誰か

Googleだったか、世界中の書物をスキャンしてデータ化する試みがある。では、もし仮に地球上の全書物をデータ化し終えた暁には、もはや紙の書物がすべて焼き払われたところで、人類にとっては痛くもかゆくもないものだろうか。

そんなわけはないだろう。豊かさ、あるいは人間らしさは、決してデータ化しえないところにこそ、しぶとく、いっそ永遠に存在し続ける。

というか、舌の話から脱線し過ぎて、もはや自分でも何を言っているのかわからなくなってきたので、この辺でお開き。

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