炎上CMでよみとくジェンダー論 (瀬地山角/光文社)

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東大での人気講義がもとになっている本で、確かにおもしろい。ジェンダー論は、どこか貴族的な知的遊戯に似たところがある。たぶん、いま世の中にある現実との乖離が大きすぎるからだろう。
試される本音
ジェンダー論をもっとも必要とするのは、いわゆる中間管理職の、そこそこの高給を得て、一企業のお山の裾野でしょうもない権力を振りかざしているおっさんではなかろうか。
大前提「個人差は性差を必ず超える」
呑み屋なんかで口を開けば二言目には「女は」という主語を立てるのは、たいていそんなおっさんで、だいたいにおいて品がなく、知性がない。それこそ股間でモノを考えるから、先の引用とは真逆の性差を大前提とするのである。
男もつらいよ
究極のジェンダーフリーとは、あらゆる固定的性役割から開放されることである。
自分の成果や収入だけを最大化するという戦略をとらず、夫婦ふたりのアウトプットを最大化するというスタンスをとれば、残業など断ってさっさと保育所に直行し、夕食を作って妻の帰りを待つ方が、はるかに合理的な行動なのです。
とかく男は手柄を立てたがる。マウントを取りたがる。私の姉夫婦など、ふたりともがフルタイムで、稼ぎもほとんど同じなのに、家事・料理・子育ての一切を妻である姉が負担している。
そこで義兄は「おれは稼いでいる!」とうそぶいて救いようがないのだが、別の見方をすれば、彼は彼で、男たるもの一家の大黒柱として金を稼いで胸を張る(虚勢を張る)という、伝統的なジェンダー役割にがんじがらめにされているように見えなくもない。
どちらかというと女のほうがつらいよ
女だから短大でいい。このような考え、発想は、いまだ根強く存在する。東京医大が女子の合格者数を抑制していた事件など、まだ記憶に新しい。
加えて、生涯続く賃金格差。主婦などほとんど絶滅しかけているというのに、たとえフルタイムで勤めていても、家のことの一切を暗黙のうちに背負わされる。
高度成長期のころ、女性の結婚について、「クリスマスケーキ」という言葉がありました。25(歳)を過ぎると価値がなくなることからつけられたものです。いまでは20代前半に結婚となるとむしろ早いと思うでしょうから、隔世の感があります。その後この言葉は「年越しそば」になり、「賞味期限」の分岐点が30歳と考えられた時代があります。
母だから、女だから、あるいは母のくせに、女のくせに。そのような物言いは数限りなく、要するに都合よく言いなりに、奴隷になれと言っているのと同じである。
それで近年、ジェンダーギャップに苦しむ女性たちが声を上げ、大きなムーブメントとなって話題に上ることが多い。
素晴らしいことだ。しかし、実際の個々の家庭の現場において、そのようなムーブメントが、皿洗いの一枚でも男性にさせる影響力を持ったかと言えば、はなはだ疑問である。
性役割の雛形が作られるのは、何より家庭においてである。いつの時代も、子供にとって父と母、それに親類縁者はロールモデルである。そこに変化がなければ、何度大きなムーブメントが起ころうが、真にジェンダーフリーな世界の到来はあり得ないのではないだろうか。
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