たべもの文明考 (大塚滋/朝日新聞社)

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ほんっとすばらしい本。

ぼくが愛するのはこういう本だという代表のような内容で、とっつきやすく、かつ深い。

九里よりうまい十三里が正しくは十三里半だろうとか、牛や馬など、四つ足の家畜を食べる習慣がなかった明治の初期には、肉をとったあとの家畜を土に埋めてお経をあげていたとか、田舎のおばあちゃんなんか「仏様を汚してはいけない」と、仏壇に目張りまで、したそうである。

チョコレートが日本に入ってきた当時は「あれは泥を固めたものではないか?」などと言われていたり、そもそも砂糖は有史以来、長いあいだとんでもない貴重品であり、清少納言でさえ食べたことはなかった、などなど。

しかし豆知識だけに終わらない。

1978年に初版発行の古い本なのだが、「有史以来、はじめて日本人のすべてが米を食べている」といい、食が「単に生きるため」から「楽しむため」に変わってきていることを指摘している。

とりあえず、人間はいままでもこれからも、種々雑多のものを食べて生きていくのだが、その先にはいったいなにがあるのかと、高度経済成長の真っ只中で、浮かれ気分でしかない世の中の空気の中で、食を通してやさしく、かつ重大な問題提起を与えているこの著者には、心からの敬意を表したい。

あんたは偉い!今も生きてるかどうか知らんけども。

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