ニセ札つかいの手記 (武田泰淳/講談社)

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評価:

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評価はニセ札の手記だけの場合。

この本には他に二編【ピラミッド付近の行方不明者】【白昼の通り魔】という短編が収められている。

ニセ札の手記は、先日読んだ【おかねの話】鈴木武雄 /岩波新書で紹介されていて、非常に興味深かったので即Amazonで注文した次第、なのだが、古い本のくせに1000円もした。

それはさておき、お金とはいったいなんなのか、社会の信用としてのお金、個人の信用としてのニセのお金、が対比されるような感じで物語が展開する。

ある種のシニカルなテーマなのだが、文体や設定により、無闇に高尚にならず、土臭い庶民の生活に落としこむことでユーモアたっぷりに描かれている。

そうとうひさしぶりに小説らしい小説を読んだが、なかなか、おもしろいかもしれない。

話は変わるが最近、どこかの書店で小説の文庫本を、タイトルや作者などを伏せ、書き出しの一行だけを呈示するスタイルで売り出したところ、ばか売れしているらしい。

ので、それにならって各短編の書き出しをご紹介。

・ニセ札の手記

今日は、一日で三枚つかった。

・ピラミッド付近の行方不明者

K・L・Mと言えば、オランダの航空会社。

・白昼の通り魔

私は生き残りの者でした。

書き出しで選ぶなら、ニセ札か白昼の通り魔、かな。実際、白昼の通り魔はかなりよかった。

というか、タイトルや作者を伏せて書き出しの一行でばか売れするっていう現象は、たぶん、人々は既存の価値観で選ぶことに飽きてるんだなあと思う。もっと言えば、何かをいいと思って何かを買うっていう行為自体に飽きている。

何かをいいと思う、っていう判断基準って、よくよく考えてみればがっちがちなわけで。

飲食店の基準で言えば、「安い・うまい・早い」だけじゃなく、たまには、「高い・まずい・遅い」とかいうあり得ない基準で選んでもいいんじゃないのかなと。

いや、よくないか。

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