ニセ札つかいの手記 (武田泰淳/講談社)

書籍ニセ札つかいの手記(武田泰淳/講談社)」の表紙画像

購入価格:1049

評価:

この記事は約2分37秒で読めます

評価はニセ札の手記だけの場合。

この本には他に二編【ピラミッド付近の行方不明者】【白昼の通り魔】という短編が収められている。

ニセ札の手記は、先日読んだ【おかねの話】鈴木武雄 /岩波新書で紹介されていて、非常に興味深かったので即Amazonで注文した次第、なのだが、古い本のくせに1000円もした。

それはさておき、お金とはいったいなんなのか、社会の信用としてのお金、個人の信用としてのニセのお金、が対比されるような感じで物語が展開する。

ある種のシニカルなテーマなのだが、文体や設定により、無闇に高尚にならず、土臭い庶民の生活に落としこむことでユーモアたっぷりに描かれている。

そうとうひさしぶりに小説らしい小説を読んだが、なかなか、おもしろいかもしれない。

話は変わるが最近、どこかの書店で小説の文庫本を、タイトルや作者などを伏せ、書き出しの一行だけを呈示するスタイルで売り出したところ、ばか売れしているらしい。

ので、それにならって各短編の書き出しをご紹介。

・ニセ札の手記

今日は、一日で三枚つかった。

・ピラミッド付近の行方不明者

K・L・Mと言えば、オランダの航空会社。

・白昼の通り魔

私は生き残りの者でした。

書き出しで選ぶなら、ニセ札か白昼の通り魔、かな。実際、白昼の通り魔はかなりよかった。

というか、タイトルや作者を伏せて書き出しの一行でばか売れするっていう現象は、たぶん、人々は既存の価値観で選ぶことに飽きてるんだなあと思う。もっと言えば、何かをいいと思って何かを買うっていう行為自体に飽きている。

何かをいいと思う、っていう判断基準って、よくよく考えてみればがっちがちなわけで。

飲食店の基準で言えば、「安い・うまい・早い」だけじゃなく、たまには、「高い・まずい・遅い」とかいうあり得ない基準で選んでもいいんじゃないのかなと。

いや、よくないか。

     

ブログ一覧

  関連記事

アメリカの歴史―テーマで読む多文化社会の夢と現実

教科書としても使われているらしく、全体として固い。しかし内容もまた手堅い。「おお ...

カラー版 ベトナム 戦争と平和

アメリカについて知るなら、ベトナム戦争は外せないだろうと手に取った。知っていたの ...

星の王子さま The Little Prince (ラダーシリーズ Level 2)

英語多読の一環で。しかし、読むとピーターパン症候群が悪化する。

会話力がアップする英文法のレッスン

本書は基本、先生と生徒のやりとりという体で進むのだが、ちょっと生徒が優秀過ぎる。

オランダ風説書―「鎖国」日本に語られた「世界」

私を含め多くの日本人は、鎖国には外国排除、外国人許すまじというような強いイメージ ...