安いニッポン 「価格」が示す停滞 (中藤 玲/日経BP)
購入価格:935円
評価:
この記事は約2分42秒で読めます
くら寿司のアメリカ店舗「KULA」や、海外のDAISOについてのくだりは、しみじみと悲しくなる。あれもこれも、100円なのは日本だけ。初めこそ私も向こうが高いのだと思って暮らしていたが、帰国してみると、あらためて日本が危機的に安過ぎるだけなのだということを痛感。
日本は戦後ずっと、「生き残るには価格競争しかない」という状況が続いてきた。 他の誰もがやらないことに特化して「オンリーワン」で勝負する欧米企業に対して、日本企業は品質や性能、領域のユニークさで競うことができず、安さで勝負をする傾向があるためだ。
アメリカ人件費、5年で2割増
気になる海外での価格だが、アメリカは2.6ドル~3ドル(約270~約310円)、台湾は38台湾ドル(約140円)で、やはりいずれも日本の100円よりも高い。「もちろん現地の競合店よりはだいぶ安くしている。それでもやっぱり人件費が高すぎて、日本よりは高くせざるを得ない」(田中社長)という。「アメリカでは魚はあまり食べられないので安く、コメも安い。つまり原材料は安いが人件費と家賃が日本より桁違いに高い」
高級車の組み立て工場における生産性(1台あたりの組み立て時間)は日本が約17時間でアメリカは約33~38時間、ヨーロッパは約37~111時間とされていた。 それでもドイツの生産性が高いと言われる所以は、価格にあったのだという。自動車など多くのモノが、日本よりも高い。(中略) 「ヨーロッパで5倍の時間をかけて作った車も3倍の価格で売れば、金額の生産性は2倍になる。それこそがドイツの生産性の高さの理由だった」と分析する。特にドイツは「需要が低いときでも絶対にもうかるように」と、需要変動のボトムに合わせた生産能力で生産設備を持つ。そのため、例えば自動車ならデイーラーに行くと「納期は半年後」と言われることもよくある。だが自動車に限らずドイツ製品はブランドで差別化されているので、多少の価格差で消費者が他ブランドに流れることは少ないという。つまり、市場で欠品しても消費者は待つしか選択肢がないのだった。一方で、日本は欠品しないように需要変動のピークに合わせて生産能力を持つため、需要が落ち込んだときに値下げをしてしまう。「日本の生産性が低いという理由の一つは、日本の価格付けの『安さ』にある」
- 前の記事
- 2030年:すべてが「加速」する世界に備えよ
- 次の記事
- 西洋美術とレイシズム
ご支援のお願い
もし当ブログになんらかの価値を感じていただけましたら、以下のいずれかの方法でご支援いただけますと幸いです。
Amazonギフト券で支援する
→送信先 info@tomonishintaku.com
ブログ一覧
-
ブログ「むろん、どこにも行きたくない。」
2007年より開始。実体験に基づいたノンフィクション的なエッセイを執筆。アクセス数も途切れず年々微増。不定期更新。
-
英語日記ブログ「Really Diary」
2019年より開始。もともと英語の勉強のために始めたが、今ではすっかり純粋な日記。呆れるほど普通の内容なので、新宅に興味がない人は読んで一切おもしろくない。
-
音声ブログ「まだ、死んでない。」
2020年より開始。ロスのホームレスとのアートプロジェクトでYouTubeに動画をアップしたところ、知人にトークが面白いと言われたことをきっかけにスタート。その後、死ぬまで毎日更新することとし、コンテンツ自体を現代アートとして継続中。
-
読書記録
2011年より開始。過去十年以上、幅広いジャンルの書籍を年間100冊以上読んでおり、読書家であることをアピールするために記録している。各記事は、自分のための備忘録程度の薄い内容。WEB関連の読書は合同会社シンタクのブログで記録中。
関連記事
ハックルベリー・フィンのアメリカ―「自由」はどこにあるか
2014/09/15 book-review book, migrated-from-shintaku.co
私としてはトムソーヤもハックルベリーもつまらなかったのだが、しかし、この解説的な ...
宦官(かんがん)―側近政治の構造
2012/11/17 book-review migrated-from-shintaku.co
宦官とはぺニスを切除した、つまり去勢された役人である。 なぜにこういう役職という ...
日本語誤用・慣用小辞典
2013/12/10 book-review migrated-from-shintaku.co
東大での人気講義がもとになっている本で、確かにおもしろい。ジェンダー論は、どこか ...
愛と暴力の戦後とその後
2014/08/12 book-review book, migrated-from-shintaku.co
タイトル通り、というような、妙なセンチメンタリズムが見え隠れする本。戦後から現代 ...