2030年:すべてが「加速」する世界に備えよ (ピーター・ディアマンディス (著), スティーブン・コトラー (著), 山本 康正 (その他), 土方 奈美 (翻訳)/NewsPicksパブリッシング)
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「人間が想像できることは、人間が必ず実現できる」とは、SFの父とも呼ばれるジュール・ヴェルヌの言葉である。
本書は未来予想を多く含んでいるが、しかしそのほとんどは、十中八九実現すると信ずるに足るだけの説明がある。そして、そんな世界を生き抜くには、3回くらい生まれ変わるつもりで臨まなければ、到底ついていけないと思わされる。ダーウィンではないが、適者生存。変化する者だけが生き残る。
2023年には1000ドルクラスのふつうのノートパソコンが、人間の脳と同じレベルのコンピューティング能力(1秒あたり約10の16乗サイクル)を持つようになる。その25年後には、同じクラスのノートパソコンが地球上の全人類の脳を合わせたのと同じ能力を持つようになる。
レイ・カーツワイルはよく「寿命脱出速度(LEV)」という言葉を口にする。つまり私たちが1年生きる間に、科学によって寿命が1年以上延びるという状況だ。遠い未来のような気がするが、カーツワイルは私たちが思うよりずっと近いという。「ほんの10~12年先には、あらゆる人が寿命脱出速度に達している可能性が高いのです」
なぜ離婚率はこれほど高いのか。理由の一つは、結婚は4000年以上前にできた制度だということだ。当時は10代で結婚し、40歳までには死んでいた。つまり結婚制度はせいぜい20年の拘束という前提で成り立っていたのだ。しかし医療の進歩や寿命が延びたことで、今では結婚生活は半世紀も続くようになった。そうなると「死が二人を分かつまで」の意味もまったく変わってくる。
食べ物はムダのかたまりだ。形になるまでの一つひとつのステップにムダが組み込まれている。 (中略) 「あらゆる動物は、植物あるいは植物を食べる動物を食べる。これが食物連鎖であり、それを可能にしているのは太陽光から炭水化物(糖類)というエネルギー分を合成する、植物固有の能力だ。炭水化物はあらゆる動物の基本燃料であり、太陽光による光合成はこの燃料をつくる唯一の方法だ。酸素の代替物が存在しないように、植物エネルギーの代替も存在しない」
食べ物が皿の上に乗るまでの旅路は、地球から1億4960万キロメートル離れた星から始まる。光合成に使われる「太陽光」はここで発生する。毎秒膨大な量の水素原子が核融合反応を起こしているが、地球に届くのは発生したエネルギーの10億分の1に満たない。そして地球表面に到達したエネルギーのうち、光合成に使われるのは1パーセント以下だ。ムダはまだまだ続く。生育した食べ物は輸送する必要があり、それは環境に大きな負荷をかける。 (中略) アメリカ人の食べる物は、食卓にのぼるまで平均2400~3200キロを移動する。 (中略) 食事が終わっても、エネルギーのムダは続く。アメリカでは国民の8人に一人が食事に事欠く一方で、食料の40%が廃棄されている。畑で腐っていくものもあれば、ゴミ処理場に運ばれるものもある。自然資源防衛協議会によると、この食品ロスの15%を「救済」するだけでも、食料の確保に苦しむ4200万人のうち2500万人が救われるという。
土から掘り出した瞬間から、野菜の栄養価は低下しはじめる。野菜が収穫されてから食卓に上るまでに2週間かかるケースも珍しくはないが、そのあいだに栄養価は45%も失われることもある。
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