現代アートを買おう! (宮津 大輔/集英社)

書籍現代アートを買おう!(宮津 大輔/集英社)」の表紙画像

購入価格:409

評価:

この記事は約2分30秒で読めます

狭いアート界では超がつくほど有名なサラリーマンコレクター宮津さんのご本。公募展の審査員などもやっていらっしゃる。来年のワンダーシードでの審査員でもある。

頭がポマードでてっかてかの油ギッシュな成金風のおっさんだという認識しかなかったのだが、この本を読んでかなり見方が変わった。実際、400万とか500万とか、そんな普通の年収だったのかとびっくりした。少なくとも1000万くらいはあるものと漠然と思ってました。だからというわけではないが、文体にも内容にも嫌味がなく、ただただアートに魅せられ、愛しているんだろうなあというのが素直に伝わってくる。

著名コレクターであることを誇るわけでもなく、ごくごく一般的感覚と目線で、ガーデニングをすすめるがごとく、アートは楽しいんですよ、みなさんも現代アート買ってみましょうよと語りかけている。

それはともかく、この本で知って一番驚いたのは、個人所蔵の作品を美術館などへ貸し出す際の謝礼である。ぼくは少なくとも数万〜数十万、場合によって数百万ではないかと思っていた。

しかし実は、日本の美術館でもせいぜい数千円であり、海外の美術館にいたっては有名なところでも基本的に"謝礼なし"だそうである。

そういうもんなのかあ。ベーコンの個人所蔵作品を借りるとか、超たけーんだろうなとか思ってたのに、がっかりというわけではないがアートの世界の仕組みって不思議というかよくわからんなと思う。

だって、たとえばあなたがランボルギーニだとかフェラーリだとかを持っていたとして、展示したいので貸してくださいと言われて、どこのだれが"タダで"貸してくれるというのだろう。

宮津さん曰く「アートは次世代に引き継いでいくべき公共の財産」と言っているが、きれいごとではなく、ほんとうにそういうものなのかもしれない。

月面さえも売買するような所有欲に凝り固まった現代にあって、アートとはまったくもって稀有な純粋な領域なのかもしれない。

記事カテゴリー: art
     

ブログ一覧

  関連記事

ウォーホルの芸術 20世紀を映した鏡

アーティストの成功、その人生の光と影をしみじみと思う。また、ウォーホルなんて知っ ...

現代写真論

今年読んだ美術本の中でダントツの感銘を受けた。また、自分の作品の発想は実に写真的 ...

日本の現代アートをみる

そのまんまであるが、最近のおもしろい作家がわかる。というか、図版がメインで、テキ ...

駆けぬける現代美術 1990-2010

1990~2010までの新聞の美術批評がまとめられた本。新聞という限られたスペー ...

当サイト内の文章・画像等の内容の無断転載及び複製等の行為はご遠慮ください。

Unauthorized copying and replication of the contents of this site, text and images are strictly prohibited. All Rights Reserved.

Copyright © 2012-2025 Shintaku Tomoni. All Rights Reserved.