パパラギ はじめて文明を見た南海の酋長ツイアビの演説集 (エーリッヒ ショイルマン (著), Erich Scheurmann (著), 岡崎 照男 (著), 和田 誠 (著), ツイアビ (著), Tuiavii (著)/立風書房)

書籍パパラギ はじめて文明を見た南海の酋長ツイアビの演説集(エーリッヒ ショイルマン (著), Erich Scheurmann (著), 岡崎 照男 (著), 和田 誠 (著), ツイアビ  (著), Tuiavii (著)/立風書房)」の表紙画像

購入価格:258

評価:

この記事は約3分45秒で読めます

パパラギ——とても不思議な響きを持った言葉だ。サモア語で、空を打ち破ってきた人、という意味だという。響きだけでなく、意味も不思議である。

それは、こうなのである。その昔、帆船に乗った宣教師がヨーロッパ人としてはじめてサモアにやって来た。サモア人は遠くからその白い帆を見て、空にあいた穴だと思い、その穴を通ってヨーロッパ人がサモアの島々にやってくると信じた。パパラギとは「空を破って現れた人」——ヨーロッパ人のことなのである。

以上がパパラギという単語の説明である。

今まで読んだことがない、不思議な本である。読んでどうこうというわけではない、すぐに消化してなにか行動を起こそうとさせるわけでもない、もっと言えば何の役にも立たないような本なのだが、確実に突き刺さるものがある。

普通と思っていること、当たり前と思っている環境、そうすべきだとばかり思っている生き方。

そういった、考える必要もないと思われるような現代人としての土台が、静かに、しかし確実に揺すぶられる。

以下、その揺すぶられた箇所を抜粋。

ぴかぴかの光る丸い形の金属か、大きい重たい紙を渡してみるがよい——とたんに目は輝き、唇からはたっぷりよだれが垂れる。お金が彼の愛であり、金こそ彼の神様である。

ある人がお金をたくさん、普通の人よりはるかにたくさん持っていて、そのお金を使えば、百人、いや千人がつらい仕事をしなくても済むとする。——だが、彼は一銭もやらない。〜中略〜「そんなにたくさんのお金をどうするんです?着たり、餓えや渇きをしずめるほか、この世であなたに何ができますか?」答えは何もない。あるいは彼は言うかもしれぬ。「もっとお金が欲しい。もっともっと、もっとたくさん……」やがておまえにもわかるだろう。お金が彼を病気にしたことが。彼はお金にとりつかれていることが。

たとえ小屋の天井の一番高いところまで、あふれるほどの食物があり、彼とアイガ(家族)が一年食べても食べきれないほどでも、食べるに物なく飢えて青ざめた人を探しに行こうとはしない。しかもたくさんのパパラギが飢えて青ざめて、そこにいるのに。

熟したヤシは、自然に葉を落とし実を落とす。パパラギは、葉も実も落とすまいとするヤシの木のように生きている。「これはおれのものだ!取っちゃいけない!食べちゃいけない!」——どうすれば、ヤシは新しい実を結ぶか。ヤシはパパラギよりずっと賢い。

どのパパラギも職業というものを持っている。職業というのが何か、説明するのは難しい。喜び勇んでしなくちゃならないが、たいていちっともやりたくない何か、それが職業というもののようである。

職業を持つとは、いつでもひとつのこと、同じことをくり返すという意味である。目をつぶっていても、また緊張なしでもできるまで何回もそれを繰り返す。たとえば私が自分で小屋を作るとか、むしろを編むほか、何にも仕事をしないとする。——すると私の職業は小屋作り、あるいは、むしろ編みということになる。

抜粋終わり。

とりわけ最後の、職業についての記述には考えさせられた。

確かに、ひとつのことをし続けるというのは、そうとうに不自然なことなのかもしれない。

道路も掘れば、野菜もつくり、絵も描き、人の弁護や、街の警備もしたりする。

いろんな、あらゆることができる肉体と頭脳を持ちながら、基本的には生涯にひとつのことをやり続ける。

この社会の中では当たり前であり正解なのだろうけれど、人間という生き物としては、いったいそれはどういうことなのだろう。

ご支援のお願い

もし当ブログになんらかの価値を感じていただけましたら、以下のいずれかの方法でご支援いただけますと幸いです。

Amazonギフト券で支援する
→送信先 info@tomonishintaku.com

Amazonほしい物リストで支援する

PayPalで支援する(手数料の関係で300円~)

     

ブログ一覧

  • ブログ「むろん、どこにも行きたくない。」

    2007年より開始。実体験に基づいたノンフィクション的なエッセイを執筆。アクセス数も途切れず年々微増。不定期更新。

  • 英語日記ブログ「Really Diary」

    2019年より開始。もともと英語の勉強のために始めたが、今ではすっかり純粋な日記。呆れるほど普通の内容なので、新宅に興味がない人は読んで一切おもしろくない。

  • 音声ブログ「まだ、死んでない。」

    2020年より開始。ロスのホームレスとのアートプロジェクトでYouTubeに動画をアップしたところ、知人にトークが面白いと言われたことをきっかけにスタート。その後、死ぬまで毎日更新することとし、コンテンツ自体を現代アートとして継続中。

  関連記事

スターリン - 「非道の独裁者」の実像

社会主義について知りたくて手に取ったが、タイトル通りスターリンその人の実像に迫る ...

ネイティブスピーカーの英文法絶対基礎力 (Native speaker series)

この人の本は概してオススメできる。しかし、著書を読みすぎてだんだん食傷気味ではあ ...

企業情報漏洩防止マニュアル―伸びる企業のリスクマネジメント

全国の社長、管理職に非常に有益な本であろうと。が、しかし、雇われる側としては読ん ...

日本人の大疑問〈7〉―日本人のソボクな疑問に答える究極の大雑学書

もう飽きました。内容も、冷静にクオリティが低いです。 雑学にもクオリティがありま ...

正しく怖がる感染症

2017年の本だが予言的。医学界の常識が現実になったに過ぎないからか。『新型流行 ...

当サイト内の文章・画像等の内容の無断転載及び複製等の行為はご遠慮ください。

Unauthorized copying and replication of the contents of this site, text and images are strictly prohibited. All Rights Reserved.

Copyright © 2012-2025 Shintaku Tomoni. All Rights Reserved.