クラシック批評こてんぱん (鈴木 淳史/洋泉社)

書籍クラシック批評こてんぱん(鈴木 淳史/洋泉社)」の表紙画像

購入価格:1

評価:

この記事は約2分43秒で読めます

つい先日、お笑い芸人が「あ、犬」というネタを披露して炎上していたが、中途半端な情報こそ一番の害悪だと思う。それならいっそ、「アイヌ」という単語すら知らないほうがいい。少なくとも本書を読めば、なんとなくノリでネタにして笑うような醜態をさらすことだけは避けられるだろう。

世界中のどの民族とも異なるアイヌの特徴を一言であらわすとすれば、「日本列島の縄文人の特徴を色濃くとどめる人びと」ということになるでしょう。縄文文化は北海道から琉球列島にかけて一万年以上も続きましたが、アイヌは日本列島に暮らしたこの縄文人の特徴をよく残しているのです。日本のマジョリティである私たち和人は、弥生時代に朝鮮半島から渡ってきた人びとと、日本列島の先住民である縄文人が交雑して成立した集団です。アイヌはサハリンの先住民や和人などと混淆することもありましたが、基本的にこの交雑化を積極的には受け入れようとしなかった縄文人の末裔であり、その文化には縄文文化の伝統も認められます。

アイヌ語を日本語の方言のようなものとおもっている方がいるかもしれません。しかしアイヌ語は、周辺地域に親戚関係にあるような言語が確認されておらず、日本語とアイヌ語も、構造的に深いレベルで異なる言語であるとされています。両者の同系関係はあるともないともいえない、つまり系統は不明だというのです。アイヌ語は、語順が日本語と同じという特徴があります。たとえば、「天から役目なしに降ろされたものはひとつもない」と訳されるアイヌ語は、kanto or wa yaku sak no a-rankep shinep ka isam(天/そのところ/から/役目/をもっていない/よく〜する/下がる・させる・もの/ひとつのもの/も/ない)、というものです。しかし言語学者の中川裕によれば、日本語が接尾辞優勢であるのにたいし、アイヌ語は接頭辞が優勢というちがいがあります。

以下のアイヌの方のインタビューは興味深い。そのあたりは、確かにDNAに刻み込まれて消えないものがあろうと思う。

アイヌは記憶の力に優れているとおもいます。これは自慢話ではなく、つい100年前まで文字をもたず、どのようなことでも記憶にとどめておくしか記録するすべのなかった人びとにとって、それは当然のことではなかったでしょうか。

記事カテゴリー: art

ご支援のお願い

もし当ブログになんらかの価値を感じていただけましたら、以下のいずれかの方法でご支援いただけますと幸いです。

Amazonギフト券で支援する
→送信先 info@tomonishintaku.com

Amazonほしい物リストで支援する

PayPalで支援する(手数料の関係で300円~)

     

ブログ一覧

  • ブログ「むろん、どこにも行きたくない。」

    2007年より開始。実体験に基づいたノンフィクション的なエッセイを執筆。アクセス数も途切れず年々微増。不定期更新。

  • 英語日記ブログ「Really Diary」

    2019年より開始。もともと英語の勉強のために始めたが、今ではすっかり純粋な日記。呆れるほど普通の内容なので、新宅に興味がない人は読んで一切おもしろくない。

  • 音声ブログ「まだ、死んでない。」

    2020年より開始。ロスのホームレスとのアートプロジェクトでYouTubeに動画をアップしたところ、知人にトークが面白いと言われたことをきっかけにスタート。その後、死ぬまで毎日更新することとし、コンテンツ自体を現代アートとして継続中。

  関連記事

ラッセンとは何だったのか? ─消費とアートを越えた「先」

Amazonの配送事故で、止むを得ず書店にて新品で購入。読む時間が三日しかなかっ ...

20世紀美術

まったく彼は誠実な画家だと思う。画家らしく感情を込めてジャスパージョーンズなどの ...

近代絵画史 ゴヤからモンドリアンまで (下)

妹の夫の父親が本書の著書であるため、もったいなくもご本人から直接いただいたありが ...

メディアと芸術 ―デジタル化社会はアートをどう捉えるか

いい本だといえばそうなのかもしれないが、メディアと芸術というよりも、「メディアと ...

現代写真論

今年読んだ美術本の中でダントツの感銘を受けた。また、自分の作品の発想は実に写真的 ...

当サイト内の文章・画像等の内容の無断転載及び複製等の行為はご遠慮ください。

Unauthorized copying and replication of the contents of this site, text and images are strictly prohibited. All Rights Reserved.

Copyright © 2012-2024 Shintaku Tomoni. All Rights Reserved.