ヒーローを待っていても世界は変わらない (湯浅誠/朝日新聞出版社)

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友達に薦められてアマゾンで新品で購入して読んだが、確かになかなか面白かった。

著者は内閣参与なんてことをやっていたらしいのだが、この本に書かれたままの人格だとしたら、ぜひがんばってほしいと素直に思う。

ぼくは政治に興味はないが、君ならこの日本をなんとかできるのかもしれない、よろしくたのむと、上から目線で思う。応援したい。

というか、思うのだが、最近の本は総じておもしろい(またはわかりやすい)と思う。

ぼくがいつも読んでいるのは大抵は軽く10年くらいは前の新書の古本であるのだが、わかりにくく疲れる本が少なくない。むしろ多い。

それにくらべると、この本などは2012年8月初版で新しすぎるくらいの本である。

最近の本は出版不況だから馬鹿でもわかるようにやさしく書かれているのか、どうか。よくわからないが。

以下、なるほどと思った箇所を拾い書き。

(民間企業ではなく行政というものは)最大の特徴は「税金を使う」という点にあります。税金はこの国で暮らすすべての人によって賄われていますから、税金を使うということは「趣旨(政策)に反対する人のお金も使う」ことを意味します。賛同してくれる人の税金だけ使って、反対している人の税金を使わない、ということはできません。

「民主主義は面倒くさくてうんざりするもの」

夫婦や親子のような親しい間柄でも、自分の意見や意向だけを一方的に主張し、「おれの言うことを聞かないおまえが悪い」と言い続けていたら合意形成に至らないことは誰もが経験していることだと思います。〜中略〜あるテーマに強い執着を持っている人ほど「自分はわかっている」と強い自信を持っているだけに、異なる意見を落ち着いて聞くことができない、すぐに否定したがる、という傾向も見られます。夫婦や親子でさえ、この面倒くささに耐えられず、分裂する人たちがたくさんいます。しかしそれでも、誰かに任せるのではなく、自分たちで引き受けて、それを調整して合意形成していこうというのが、民主主義というシステムです。

政治不信はこれまでも根強くありました。しかしそれは、個々の政治家の「政治とカネ」やスキャンダルの問題、また、個々の政党の体質への批判や内紛(派閥闘争)にうんざりしたといった性質のものでした。それがこの間、急速に"政治システムに対する不信"に発展していきました。その意味で、政治不信の質が変わったのではないか、と私は感じています。

(年間三万人を越える自殺者について)亡くなられた方の近親者は、一人当たり平均五人いるそうです。三万数千人が、14年連続で亡くなっているので、14年間で約45万人。その遺族は五倍で225万人。その方たちが、もちろん全員ではないでしょうが、頭の後ろに常に鉛を抱えたような状態で生きていくことの影響が社会全体に及ばない、と考えることのほうが難しい。

「ぶれずにある立場を堅持していれば、いずれ理解される」と言って、30年40年と同じことを言い続けている人がいます。しかし、言い続けてきた30年分40年分、世の中が言っていることに近づいてきているかというと、必ずしもそうでないという場合があります。世の中には、反対の立場から30年40年原則的なことを言い続けているひともいるからです。

その際の問題点は「原則的な立場を堅持するかどうか」ではなく、「原則的な立場に現実を少しでも近づけるための、言い方ややり方の工夫をする必要がある」という点にあります。

工夫が足りないことの結果として自分の見解が広く理解されなかったことの結果責任の自覚なく、「聞き入れないあいつらがわかってない」と言っているだけでは、さらに多くの人たちから相手にされなくなっていくだけで、その逆にはならないでしょう。

以上。

特に最後の文、売れない芸術家にも通じるものがあるような気がする。大いにする。というか自分のこと。

工夫がなく、柔軟性がない。ぼくのこと。おれの芸術を誰もわかってくれなかった、なんて恨み言を言いながら死ぬのだけは避けねばならぬ。

そのために必要なのは、絶対的に自分を誉め、励まし、そしてアドバイスしてくれるパートナーだ、と思う。

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