トイレット部長 (藤島 茂/文藝春秋新社)

購入価格:1980円
評価:
この記事は約2分30秒で読めます
1960年発行の古書であるが、内容はむしろ斬新である。この著者はとにかく目の付け所が素晴らしい。肩書としては東京出身の建築家で随筆家とのことだが、有り余る才能を感じる。
台所で食物をこしらえてこれを食い、消化器の末端からこれを便所へ排泄する、といった順序を、私たちは毎日繰り返しているわけである。してみると人間というものは、建築的にいえば、台所を便所をつながく一種の管みたいなもので、私たちはこの管を維持するために、毎日あくせく働いていることになる。
「聾のツ、盲のメ、跛のチ」
最後のなど、今日で難読漢字もいいところである。ちなみにこれはそれぞれ、『聾=ツンボ(耳の不自由な方)』『盲=メクラ(視覚の不自由な方)』『跛=チンバ(足の不自由な方)』と読む。第二次世界大戦でフィリピンに行った私の祖父などはこの手の言葉を日常的に口にしていたものが、もちろん今日では放送禁止用語である。
「日本人は何しろ、公衆道徳が低いから困ったもんだ。外国人に見られても恥しい。」といったことがよく言われる。オリンピックを控えて、この議論がまたひとしきりはやることだろう。
テレビを買っても洗濯機やラジオを買っても、すべてがアフター・サービス付で、ちょっとでも故障や不具合があれば、それこそ電話一本ですぐに直しに来てくれる。これが気に食わない。何かの商品をお客に売るということは、私なんか技術者から見れば、売った時が勝負であって、試験で言えば答案を出してしまったのと同じじゃないかと考える。 (中略) いったん売った品物を、買った人の家まで行ってネジをしめたり、コードを取替えたりすることは、何だか
ひどくいけない、恥しいことではないかと思う。
出版社・編集者の皆様へ──商業出版のパートナーを探しています
*本ブログの連載記事「アメリカでホームレスとアートかハンバーガー」は、商業出版を前提に書き下ろしたものです。現在、出版してくださる出版社様を募集しております。ご興味をお持ちの方は、info@tomonishintaku.com までお気軽にご連絡ください。ブログ一覧
-
ブログ「むろん、どこにも行きたくない。」
2007年より開始。実体験に基づくノンフィクション的なエッセイを執筆。不定期更新。
-
英語日記ブログ「Really Diary」
2019年より開始。英語の純粋な日記。呆れるほど普通なので、新宅に興味がない人は読む必要なし。
-
音声ブログ「まだ、死んでない。」
2020年より開始。日々の出来事や、思ったこと感じたことを台本・編集なしで吐露。毎日更新。
関連記事
越えていく人——南米、日系の若者たちをたずねて
2021/07/19 book-review book, migrated-from-shintaku.co
題されたタイトルを考えると、全編を通して緊張感が足りないように思われる。むしろこ ...
ゴドーを待ちながら
2018/10/03 book-review book, migrated-from-shintaku.co
20世紀最高の作品であるらしい。いつかハムレットも読んだが、戯曲を文字で読むとい ...
Picky Eater: (Children book about Healthy Eating, Baby Books, Kids Books)
2017/06/02 book-review book, english, migrated-from-shintaku.co
ところどころ絵が怖い。
窮地にいるエンジニアは、ズルい処世術で困難を突破する
2020/06/26 book-review book, migrated-from-shintaku.co
「ズルい」という言葉にはギョッとさせられるが、しかし、ズルくない人はこの世にはい ...
不思議の国のペニス
2014/01/03 book-review migrated-from-shintaku.co
黒冷水のすさまじい才能からすると、やはりがっかりには違いない。 が、しかし、あそ ...