トイレット部長 (藤島 茂/文藝春秋新社)

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1960年発行の古書であるが、内容はむしろ斬新である。この著者はとにかく目の付け所が素晴らしい。肩書としては東京出身の建築家で随筆家とのことだが、有り余る才能を感じる。

台所で食物をこしらえてこれを食い、消化器の末端からこれを便所へ排泄する、といった順序を、私たちは毎日繰り返しているわけである。してみると人間というものは、建築的にいえば、台所を便所をつながく一種の管みたいなもので、私たちはこの管を維持するために、毎日あくせく働いていることになる。

時代を感じる一冊である。電話でわかりにくいことを表現する際の引き合い『燐寸のマ、煙草のタ』くらいならご愛嬌だが、

「聾のツ、盲のメ、跛のチ」

最後のなど、今日で難読漢字もいいところである。ちなみにこれはそれぞれ、『聾=ツンボ(耳の不自由な方)』『盲=メクラ(視覚の不自由な方)』『跛=チンバ(足の不自由な方)』と読む。第二次世界大戦でフィリピンに行った私の祖父などはこの手の言葉を日常的に口にしていたものが、もちろん今日では放送禁止用語である。

「日本人は何しろ、公衆道徳が低いから困ったもんだ。外国人に見られても恥しい。」といったことがよく言われる。オリンピックを控えて、この議論がまたひとしきりはやることだろう。

テレビを買っても洗濯機やラジオを買っても、すべてがアフター・サービス付で、ちょっとでも故障や不具合があれば、それこそ電話一本ですぐに直しに来てくれる。これが気に食わない。何かの商品をお客に売るということは、私なんか技術者から見れば、売った時が勝負であって、試験で言えば答案を出してしまったのと同じじゃないかと考える。 (中略) いったん売った品物を、買った人の家まで行ってネジをしめたり、コードを取替えたりすることは、何だか
ひどくいけない、恥しいことではないかと思う。

     

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