脱出老人 フィリピン移住に最後の人生を賭ける日本人たち (水谷竹秀/小学館)

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下手な幸福論より、よほど人間の幸・不幸のなんたるかについて考えさせられるものがある。

結局、どこに行こうが――たとえ国内の地方の田舎でも――満足できるかどうか、幸福といえるかどうかは、自分の性格や寛容さにかかっている。決してフィリピン移住が特別なことではなく、単なるひとつの選択肢なのだと思う。

2014年、約千人を対象に実施した結婚意識調査によると、50歳以上の男性が結婚したい理由に「寂しさから解放されたい」「老後の安心を得たい」が2〜3割を占め、50歳以下の年代に比べてその割合が格段に高かった。つまり、一人で過ごす老後の生活に対する不安の表れである。2010年の国勢調査を再び引用するが、65歳以上の一人暮らしは約479万人で、05年の前回調査から百万人近く増えた。

重傷を負ったり、大病を患ったりすることもあるかもしれません。途上国に住む、ということは、そのような時にもこの国の医療環境を含めて現実を受け止めるということです。私はそれがこの国に対する最低限の敬意だと思います。調子が良い時は利用して調子が悪くなったら帰国します、というのはこの国に対して大変失礼ではないでしょうか

国民の大半がカトリック教徒という宗教観に基づけば、この災害は「神様が決めたこと」としてその天命を受け入れ、それによるある種の諦めの心が働いている可能性もある。つまりは、「運命だから仕方がない」という感覚だ。日本人であれば、そんな大災害が起きた時に運命論など持ち出さない。なぜそうなってしまったのか原因を突き止め、責任の所在を明らかにすることに全力を尽くす。この両者の考え方の違いが、喪に服しているように見えるか否かにつながっているのではないだろうか。

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