けさひらく言葉 (塚本邦雄/文藝春秋)

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毎日新聞に連載されていた、短文のコラムまとめた本。

構成は、小説、歴史書、聖書、詩歌、俳句など、さまざまな書物から一行程度だけをごく短く引用して、それについて若干のウンチクを垂れる、という内容。

おもしろいような気がしなくもないが、いまいちおもしろくない。毎日ひとつずつ、新聞で読めばまた違ったのかもしれないが。

そんな中でも、感銘を受けたいくつかのものをご紹介。

学を絶てば憂へなし。【老子】

人は知識を得て心に悩みを持ち始める。書を読むことがすなわち心のわずらいの原因となる。勉強さえせねば、すべての心労は消えてなくなるであろう。以下省略

弾かれざる琴に婚後の月日かな【伊丹三樹彦「人中」】

新婚の、とある夕暮れに聴いた「春の海」〜中略〜日々は過ぎ去り、二人は父母となり、琴は立てかけられたまま眠っている。以下省略

「やがて死ぬけしきは見えず蝉の声」と不意にテディーがいった。【J・D・サリンジャー「テディー」中川敏訳】

テディーはまだ十歳で、〜中略〜神童だ。「この道や行く人なしに秋の暮」も暗記している。もっとも彼の芭蕉評価は低い。両方ともあまり感情がこもっていないのだそうである。以下省略

待つ宵、帰るあした、いずれかあはれはまされる。【平家物語】

恋人を待ちわびる夕暮れと、一夜を共にしてわかれて行く明方と、どちらがあわれかとの主上からの問いに、小侍従という女房は「待宵にふけゆく鐘の声きけば帰るあしたの鳥はものかは」と歌い、宮廷の人々を感動させ、「待宵の小侍従」と呼ばれた。十二世紀近く福原遷都のころの話。

芭蕉の句なんてほとんど知らなかったのだが、「やがて死ぬけしきは見えず蝉の声」には、なんともいえない深さを感じる。ああ、よくはわからんが、なんとなくわかるなあ、人生ってそういうもんだよなあ、よくわからんけど、という気がする。

     

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