けさひらく言葉 (塚本邦雄/文藝春秋)

購入価格: 不明
評価:
この記事は約1分28秒で読めます
毎日新聞に連載されていた、短文のコラムまとめた本。
構成は、小説、歴史書、聖書、詩歌、俳句など、さまざまな書物から一行程度だけをごく短く引用して、それについて若干のウンチクを垂れる、という内容。
おもしろいような気がしなくもないが、いまいちおもしろくない。毎日ひとつずつ、新聞で読めばまた違ったのかもしれないが。
そんな中でも、感銘を受けたいくつかのものをご紹介。
学を絶てば憂へなし。【老子】
人は知識を得て心に悩みを持ち始める。書を読むことがすなわち心のわずらいの原因となる。勉強さえせねば、すべての心労は消えてなくなるであろう。以下省略
弾かれざる琴に婚後の月日かな【伊丹三樹彦「人中」】
新婚の、とある夕暮れに聴いた「春の海」〜中略〜日々は過ぎ去り、二人は父母となり、琴は立てかけられたまま眠っている。以下省略
「やがて死ぬけしきは見えず蝉の声」と不意にテディーがいった。【J・D・サリンジャー「テディー」中川敏訳】
テディーはまだ十歳で、〜中略〜神童だ。「この道や行く人なしに秋の暮」も暗記している。もっとも彼の芭蕉評価は低い。両方ともあまり感情がこもっていないのだそうである。以下省略
待つ宵、帰るあした、いずれかあはれはまされる。【平家物語】
恋人を待ちわびる夕暮れと、一夜を共にしてわかれて行く明方と、どちらがあわれかとの主上からの問いに、小侍従という女房は「待宵にふけゆく鐘の声きけば帰るあしたの鳥はものかは」と歌い、宮廷の人々を感動させ、「待宵の小侍従」と呼ばれた。十二世紀近く福原遷都のころの話。
芭蕉の句なんてほとんど知らなかったのだが、「やがて死ぬけしきは見えず蝉の声」には、なんともいえない深さを感じる。ああ、よくはわからんが、なんとなくわかるなあ、人生ってそういうもんだよなあ、よくわからんけど、という気がする。
- 前の記事
- 幻の声 NHK広島8月6日
- 次の記事
- 日本国憲法・検証 資料と論点 第五巻 九条と安全保障
出版社・編集者の皆様へ──商業出版のパートナーを探しています
*本ブログの連載記事「アメリカでホームレスとアートかハンバーガー」は、商業出版を前提に書き下ろしたものです。現在、出版してくださる出版社様を募集しております。ご興味をお持ちの方は、info@tomonishintaku.com までお気軽にご連絡ください。ブログ一覧
-
ブログ「むろん、どこにも行きたくない。」
2007年より開始。実体験に基づくノンフィクション的なエッセイを執筆。不定期更新。
-
英語日記ブログ「Really Diary」
2019年より開始。英語の純粋な日記。呆れるほど普通なので、新宅に興味がない人は読む必要なし。
-
音声ブログ「まだ、死んでない。」
2020年より開始。日々の出来事や、思ったこと感じたことを台本・編集なしで吐露。毎日更新。
関連記事
反転する福祉国家――オランダモデルの光と影
2021/08/16 book-review book, migrated-from-shintaku.co
これからの時代の福祉や移民のあり方を探るのに、オランダほど参考になる国はないと考 ...
必ずわかる! 「○○(マルマル)主義」事典
2013/08/24 book-review book, migrated-from-shintaku.co
犯行の様子を淡々と、理路整然と語る犯人は、しかし知能指数は高い。知能とその行い( ...
2012年1月1日~2012年3月28日までの読書記録
2012/03/28 book-review migrated-from-shintaku.co
16.【アート:“芸術”が終わった後の“アート”】松井みどり/朝日出版社(201 ...
中学・高校で習った英語の基本を5時間でやり直す本
2013/04/24 book-review english, migrated-from-shintaku.co
ふだん、なにげなく暑いとか寒いとか、湿気が多いだとか乾燥しているだとかぼやいてい ...
蕎麦ときしめん
2014/10/30 book-review book, migrated-from-shintaku.co
実におもしろい。軽くてさくさく読めるのだが、しかし芯がしっかりあるような。読んで ...