メディアと芸術 ―デジタル化社会はアートをどう捉えるか (三井秀樹/集英社)

書籍メディアと芸術 ―デジタル化社会はアートをどう捉えるか(三井秀樹/集英社)」の表紙画像

購入価格:251

評価:

この記事は約2分43秒で読めます

いい本だといえばそうなのかもしれないが、メディアと芸術というよりも、「メディアと芸術のあり方」というような内容である。

著者は美術系大学でデザイン関連の教鞭をふるう教授らしいのだが、まあそのせいだろう、いかんせん「ザ・教育:IT化社会の現代において美術教育とはかくあるべき」という感じの主張が強めである。

たとえば著者は、まずはコンピューターを通してではなく、絵の具や粘土といった生の手仕事を通して学ぶべきだと言っている。ディスプレイ上の無機質な実感のない世界ではなく、五感をフルに使って色や形に触れる。その後にはじめて、デジタル技術との融合、行き来をはかっていくべきだと。

言っていることはわからなくはない。むしろよくわかる。乱暴に言えば「人間なんじゃけえ家ん中でゲームやらパソコンやらピコピコばっかりせんと外で遊んで来いや」というようなことであろう。

ぼくなんかは、そんなこと当たり前ではないかと思ってしまうのだが、あるいは生まれた時からコンピューターに囲まれ、それが当たり前として育ってきた子供たちにとっては、そんなことを"わざわざ"言ってあげないといけないものなのかもしれない。と言ってもこの本自体10年前に出版されたものであるので、いまはもっともっと言わなければならないのかもしれない。

以下、内容の一部をご紹介。

1885年にコダック社が開発したロール・フィルムと、1889年にエジソンが発明したキネトスコープが、1895年のリュミエール兄弟による映画の誕生の契機となった。「工場の出口」と「ラ・シオタ駅の列車到着」は日常、人間が視る光景を初めて写真映像として捉えた映画表現であった。列車がホームに近づく映像が突然スクリーンに映し出されると、観客は慌てて席を立つほど驚いたと言われる。

ポロックは、この技法(アクション・ペインティング)によってたちまちニューヨークの寵児となり、それまでパリ中心の絵画市場をニューヨークに移す立役者になった、といわれている。

デザインとは、車や家具、ポスターのように用をもった、つまり使用目的に合わせた機能をもった美術である。

以上。

ポップアートが流行した1960年代。パリからニューヨークへとアートの中心が移る、その変化。なるほど、ポロックの存在が大きかったのか。アメリカのスーパースターと言われるだけのことはある。

記事カテゴリー: art

ご支援のお願い

もし当ブログになんらかの価値を感じていただけましたら、以下のいずれかの方法でご支援いただけますと幸いです。

Amazonギフト券で支援する
→送信先 info@tomonishintaku.com

Amazonほしい物リストで支援する

PayPalで支援する(手数料の関係で300円~)

     

ブログ一覧

  • ブログ「むろん、どこにも行きたくない。」

    2007年より開始。実体験に基づいたノンフィクション的なエッセイを執筆。アクセス数も途切れず年々微増。不定期更新。

  • 英語日記ブログ「Really Diary」

    2019年より開始。もともと英語の勉強のために始めたが、今ではすっかり純粋な日記。呆れるほど普通の内容なので、新宅に興味がない人は読んで一切おもしろくない。

  • 音声ブログ「まだ、死んでない。」

    2020年より開始。ロスのホームレスとのアートプロジェクトでYouTubeに動画をアップしたところ、知人にトークが面白いと言われたことをきっかけにスタート。その後、死ぬまで毎日更新することとし、コンテンツ自体を現代アートとして継続中。

  • 読書記録

    2011年より開始。過去十年以上、幅広いジャンルの書籍を年間100冊以上読んでおり、読書家であることをアピールするために記録している。各記事は、自分のための備忘録程度の薄い内容。WEB関連の読書は合同会社シンタクのブログで記録中。

  関連記事

女の子のための現代アート入門―MOTコレクションを中心に

まあ、かるーーーーい入門書としては及第点か。内容はなんか、解説がいちいちポエムっ ...

アート・パワー Art Power Boris Groys

極めて有益な一冊であった。この本を読み込んで制作すれば、今後10年くらいは“まと ...

プロ美術家になる!

黙って描け、ってことだ。 美術家になりたいなら必読。

すぐわかる画家別水彩画の見かた

勉強になりました。はい。

当サイト内の文章・画像等の内容の無断転載及び複製等の行為はご遠慮ください。

Unauthorized copying and replication of the contents of this site, text and images are strictly prohibited. All Rights Reserved.

Copyright © 2012-2024 Shintaku Tomoni. All Rights Reserved.