死の講義――死んだらどうなるか、自分で決めなさい (橋爪 大三郎/ダイヤモンド社)

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個人的には、昔から死には並々ならぬ興味というか、もっと、希死念慮すらあって、今でもしばしば死んでもいいなと思う。

なぜなら人間の人生はあまりにも意味がない。苦労して日々どうにかこうにか生きているにも関わらず、その一切が無意味というのはいかにも苦しい。

虚無と割り切って生きられない

人生は虚しい。そういうものだと割り切って生きるのも、ひとつの処世術である。しかし人間、どんなに合理的、科学的な人間であってもそうドライに割り切れるものではない

孔子は、生きているとはどういうことかもわからないのに、死んだらどうなるかに関心ない、と言った。

なるほどと思われる方も多いのではないだろうか。しかし、この思想を実践して生きる、つまり、あの世をはじめ、目に見えない、具体的に観測できない一切の神秘を否定して、現世のみにフォーカスして即物的に生きるというのは、意外なほど難しい、というかほとんど不可能だ。

もんどり打って意味をこじつけてきた人間の歴史

人間は意味を求める。あれもこれもたまたま、偶然で、私が生まれとことに意味はないし、あの人が死んだことにも意味はない。

何もかも儚く、生まれて、死ぬだけ、そして、すべて、さようなら。そのようなものの受け止め方は、人間にとってはあまりにもきついことだ。

煩悩の考え方。従来、ふつうの社会生活を送ることに、悪いところはひとつもなかった。それが仏教によると、覚りからほど遠い無明で、輪廻に縛られていることになる。これまでプラスだった日常が、マイナスの価値を帯びる。

人間、意味がなければ生きられないどころか、何もできないのだ。「金になる・ならない」というような判断はその典型である。

逆に、意味さえあればなんでもできる。歴史をひもとけば、数多の宗教者が死をも恐れず粛々と命を投げ打ったのも、そこに無上の意味を見出していたからこそである。

卑近な例で言えば、我が子のためなら命も厭わない親は多いだろう。意味(価値)が人間を強くもすれば、弱くもするのである。

神がいてもいいし、いなくてもいい

数年前、私はシンガポールでカトリックの洗礼を受けた。以来、クリスチャンになったわけなのだが、正直、そこまでキリスト教にこだわりがあるわけではない

イスラム教ではなにを議論してもいいが、ただし、神が何ものかを議論してはいけないのだそうだ。

私の場合はもっとシンプルに、神は存在するという前提で生きるということを決意しただけだと思っている。

人間はすべて、復活するのか。復活すると信じるのが、キリスト教である。 イスラム教は、イエスが復活したとは考えないのだが、復活を信じる。アッラーが、人間に復活を命じるとクルアーンに書いてあるからだ。 復活するのなら、人間の行動が変わる。さんざん悪いことをしたあと、死んでしまえばもう罰せられないのなら、神の支配は不完全になってしまう。死んでも復活するから、罰を逃れられない。神の主権が完全であるためには、人間は復活しなければならない。

語弊を恐れずに言えば、神(宗教)は生きるのに非常に便利なツールである。

現実問題、カトリックになって以来、とても精神が安定し、生きていれば必ずぶつかる困難にも動じなくなり、あらゆる因果を全身で受け止められるようになった。

おそらく、日本人のような中途半端な無神論者がもっとも脆弱なのだ。神は存在するなら存在する、存在しないなら存在しないと、自分で考え結論して、選択したうえで生きるかどうかが重要なのではなかろうかと、私は思う。

     

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