翻訳家じゃなくてカレー屋になるはずだった (金原 瑞人/牧野出版)

書籍翻訳家じゃなくてカレー屋になるはずだった(金原 瑞人/牧野出版)」の表紙画像

購入価格:530

評価:

この記事は約2分31秒で読めます

正直、読み通すのが非常にしんどいものがあった。内輪で盛り上がるバラエティのようなノリが随所にあり、あ、そう、と興ざめすること二度三度、四度五度。

また、著者が自分のことを「金原」と自分の名字を使うのも気持ちが悪く、なぜ編集者はそこを校正しなかったのか、あるいは仮にもプロの翻訳家である著者自身が、なにゆえ無駄なノイズを発生させる表現を選んだのか、理解に苦しむ。

じつはその本、当時、日本ユニ・エージェンシーにいた加島牧史(加島さんも加島くんも、なんとなく違和感があるので、とりあえず呼び捨て。向こうも「金原」と呼びかけてくるし)が、下訳をしないかともちかけてきたのだった。じつは彼のお父さんは著名な翻訳家で、その人の下訳を、という話だった。

英語と日本語の一人称はかなり違う。なんといっても英語の場合、一人称は「I」ひとつ。幼児でも若者でもおばあちゃんでもドラゴンでも異星人でも、みーんな「I」なのだ。これは考えようによれば、すごいことかもしれない。じゃあ日本語ではドラゴンや異星人のための特別な一人称があるのかといわれると、それはないが(たぶん)、とりあえず「ぼく、おれ、わたし、わたくし、あたし、あたい、自分、自ら、己れ、われ、わし、拙者、うぬ、朕……」数え上げればきりがない……ことはないだろうが、ずいぶんたくさんあるのは間違いない。そしてそれぞれが独自のニュアンスを持っている。

日本人でも本に興味のある人は少ないが、海外ではさらに少ない。本屋なんか一度もいかないまま墓に入る人はざらにいるのだ。新聞は読んだことがない、本も読んだことがないという人が驚くほど多い。それにくらべると、ほぼ毎日のように新聞をとっている日本人なんて(読むかどうかは別として)、世界でも珍獣に近いと思う。

最後のとこだけは、ハッとさせられた。正直、本なんか読まない人が大多数であることを忘れていた節がある。反省。

     

ブログ一覧

  関連記事

ルポ トランプ王国――もう一つのアメリカを行く

本書のエッセンスは、『トランプは、多民族国家アメリカで、人々の潜在的な差別意識や ...

閉じてゆく帝国と逆説の21世紀経済

資本主義の限界と言われて久しいが、それはそうだだろうなと素直に納得させられた。ケ ...

茶の間の正義

さすがの山本夏彦先生。勝手に私の師匠だと思っております。

「キリスト教は初めて」という人のための本―ヨハネの福音書3章16節から

この一年、キリスト教についてあれこれ学んできて、とりあえず一周して、一区切り付け ...

英語名言集

英語関連の新書はだいたい読みやすい。難解な事柄にあたる時は、まずは適当な新書を入 ...

当サイト内の文章・画像等の内容の無断転載及び複製等の行為はご遠慮ください。

Unauthorized copying and replication of the contents of this site, text and images are strictly prohibited. All Rights Reserved.

Copyright © 2012-2025 Shintaku Tomoni. All Rights Reserved.