10年後の日本 (日本の論点編集部編/文藝春秋)

書籍10年後の日本(日本の論点編集部編/文藝春秋)」の表紙画像

購入価格: 不明

評価:

この記事は約2分34秒で読めます

結局、取材や報道というものは下世話なものなのだなと思う。もちろん、その下世話な内容を期待して本書を手にした私なのではあるが、それにしても、である。

なんというか、本書自体が壮大な美談のようで、読んでいてしみじみと興ざめさせられるものがあった。

被災地では、記者として聞かなければならない質問が二つある。
「ご自宅は?」「ご家族は?」
悲しみの深部をえぐる問いかけに、時折心が砕けそうになる。
渡辺宏美さん(35)に出会ったときもそうだった。
「申し訳ありません」と渡辺さんは私に向かって頭を下げた。
「家も家族も無事なんです」
高台に建てられた130平方メートルの3LDKは、津波の被害を免れた。
ところが、取材の翌朝、一家は隣の登米市に引っ越していった。
断水が続く南三陸町では、津波でスーパーも雑貨店も流され、生活できない。
「何よりね、町を歩いてると、周囲に『あんたはいいちゃね、家も車も無事で』と言われている気がして、時々胸が張り裂けそうになるんです」

今後、海辺で見つかる遺体が減り始めたときにどうする
すでに陸地は捜索し尽くした。残された手段は一つ。
海底を網でさらうかどうか――。
「警察内部にも反対はある」と宮城県警の幹部は打ち明けた。
「いくら亡くなっているとはいえ、身内が網にかけられて引き揚げられることを、家族はどう思うだろうか」
夏が迫っている。

なぜ24歳の若い女性があの日、あの場所で命を落とさなければならなかったのか。それは本来避けられた「死」ではなかったのか――。遠藤未希さんの「死」を巡っては震災直後から、多くの町民の命を救った町職員の「美談」として報じられることがほとんどだった。 (中略) 自らの命を投げ出して人の命を助けることが尊ばれる社会が、本当に人に「優しい」社会と言えるのか

『本来避けられた死』というような表現は、ニュースなどでも日常的に使われる表現だが、非常に違和感がある。いったい『本来』とは何なのか? そんなものあるのだろうか。

前の記事
中国笑話集
次の記事
結婚論
     

ブログ一覧

  関連記事

老人のまばたき、子供のあくび

2012/07/12   エッセイ, 日常

老人にとってのまばたきは長いのか、短いのか。 子供にとってのあくびは長いのか、短 ...

「道徳」という土なくして「経済」の花は咲かず

著者が言いたいことはひとつのような気がする。 日本の道徳は素晴らしい。だけど世界 ...

陰翳礼讃

想像以上におもしろかった。糞とトイレについての話がちょくちょく出てくるのがなお良 ...

人間関係の苦労を知らない人

2013/01/11   エッセイ, 日常

冬は寒い。最近はことに寒い。つい布団の中でぐずぐずしてしまう。三時半に目覚ましを ...

個人的なテスト勉強:2/4「食品衛生学」と「中国料理」

今日もテスト勉強です、というか、昨日は今年はおろか、数年分の運を使いきったのでは ...

当サイト内の文章・画像等の内容の無断転載及び複製等の行為はご遠慮ください。

Unauthorized copying and replication of the contents of this site, text and images are strictly prohibited. All Rights Reserved.

Copyright © 2012-2026 Shintaku Tomoni. All Rights Reserved.