新編 ぼくは12歳 (岡 真史/筑摩書房)
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私が二十歳そこらの大学時代であれば、山田かまちの死のように共感でき、あるいは尊敬さえできたかもしれないが、四十路にもなった今の私が感じたのは、青臭さばかりである。
むろん、どのような死であろうと、人の死を嗤うものではない。しかし、著者紹介に「大空に投身」などと書いてあるのは、美化が過ぎやしないだろうか。
とはいえ、遺された詩歌には、才能の片鱗のようなものを感じなくもない。が、歴史に残るとか、後世に残すべきとか、そのような類のものではないと、個人的には思う。
スケートセンター
わかものたちの
きもちよい風が
たまる場所
そこは
行き一人だったものが
帰り二人になる場所
そんなことを
むねにひめるわか者が
たまる場所
だがそこには
こどくがあり
ゆううつがある……
行き二人だったものが
帰り一人になることもある
そんなできごとが
いっぱい
たまる場所
私は時々面倒なので、プリン型からそのまま、ハイ食べれば、と出すのですが、彼は必ず自分で苦心して、ガラスのお皿にきちんと盛って、プルプルとふるえているのを、世にも満足気な顔ですくって食べるのでした。しかし、必ずしもフォーマルなのがいいというわけでもなく、テレビで、ショーケンがバンにかぶりついていたのが、かっこよかったと言って、わざわざ同じようにシャブリついて見せたり、新宿の町を歩きながら、フライド・ポテトを口にほうりこんでは、“ボク、一遍これやりたかったんだ”とはしゃいで見せたりしました。 (中略) 本当にマーすけ、お前はキザで、デリケートで、優しくて、冷たくて、明朗で、横着で、茶目で、空想的で……そして、はげしく、はかない子供だったよ。
漱石が『行人』において、あの兄の恐怖の根を表現したのは、32章でしたが、34章にきて、神の問題を提出しているのを、どうお考えになりましたか。
「僕は死んだ神より生きた人間の方が好きだ」
まさに、漱石の時代とは、「神」が死んで、科学文明が恐ろしい勢いでその巨歩をのばしはじめた時代でした。不安の時代です。 (中略) この時代を考えようとするとき、まず私は、真理が神にゆだねられていた中世に訣別して、それを人間の理性に求めてゆき、今日の機械文明の土台的思想ともいえる、機械論的自然観を打ちたてた「方法序説」の思想家デカルトを思い出します。デカルトの登場によってはじめて、真理は、神の手から人間の理性にかかわるものとなり、それはまた、ヨーロッパに近代文明をひらく知恵となっています。極論するなら、「神」は、デカルトの登場によって死んだとも言えるでしょう。このことを念頭に置きますと、私はいま一人忘れられない人物を思い出します。ニーチェです。近代文明の進展にともなって、ヨーロッパでむき出しとなった人間の光と闇、その美と醜の渦まくただ中から、ニーチェは次のような声をあげています。
「神は死んだ」
ニーチェのこの認識は、それまですべての存在の意義が、神によって与えられていたことを考えますと、恐ろしい虚無を内蔵していると言えましょう。
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