ドリーム・ハラスメント 「夢」で若者を追い詰める大人たち (高部大問/イースト・プレス)
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幼少期から、私には夢がある。絵でも文章でもその他なんでもいいから、とにかくは歴史に残るという夢である。
それで正直、夢がない人の気持ちがわからない。
夢を持てと責め立てられる
夢のない人に夢を持てというのはハラスメントの一種で、それを「ドリーム・ハラスメント」と名付けたのが本書である。
考えてみれば、人は誰しも、「叶えたい夢があるから是非生んでほしい」と両親に懇願してこの世に生を受けたわけではありません。夢は、「無いのが普通」です。
わからなくはない。しかし、この世はそもそも、ハラスメントに満ちている。私はとにかく働きたくないと四六時中思っているが、しかし、世間は働け金を稼げ大人としての責任を果たせとやかましい。
これは「ワーク・ハラスメント」ではないのか。働かない自由があってもいいはずだ。しかし現代、働かないという選択肢はどこにも用意されていないのだ。
みんな勝手にしやがれ
夢を持つよう強制され苦しんでいる者がいる。それはよくわかる。しかし現実問題、この世は、異性を愛せ、結婚しろ、子供を産め、もっと稼げと、数限りないハラスメントの吹き溜まりなのだ。
評価をし過ぎないこと。カウンセリング分野では「非評価」と呼ばれる技法です。 (中略) 山本五十六の人材育成論「やってみせ」を好む教育関係者は少なくありませんが、よくみると、非評価の重要性を物語っています。 「やってみせ、言って聞かせて、させてみせ、ほめてやらねば、人は動かじ。話し合い、耳を傾け、承認し、任せてやらねば、人は育たず。やっている、姿を感謝で見守って、信頼せねば、人は実らず」
先に上げたようなシリアスなハラスメントがごまんとあるこの世界で、「ドリーム・ハラスメント」などというのはあまりにもナイーブな感覚だと思うのは私だけだろうか。
夢があろうがなかろうが、そんなことはどうでもいいではないか。ほとんどすべての大人の言うことなんか、底の浅いぺらっぺらの上っ面に過ぎないのは、思春期にもなれば誰でも悟って当然だろう。
そこで夢を持てと大人がしたり顔で言ったとて、黙れ馬鹿と放っておけばいいのである。
強制されれば腐る夢
夢は自由恋愛に似ている。他人に誰かを好け愛せと言われても、おいそれとその気になれるものではない。
大人は「目の前のことに頑張らせたい」がために、夢をツールとして活用している、という事実です。 (中略) 夢のツール化は、ある県立高校の校長先生による次のコメントに端的に表れています。 「いまの生徒は目の前のことやここでとりあえず頑張るというスタンスが無い。『何のため』という目的や理由が無いと目の前のことに頑張れないし、やる気が出ない。けれど、自分ではなかなかその理由を探せない。『夢を持て』はこうした状況でも子どもたちを目の前のことに頑張らせるための苦肉の策なんです」
自発的に、あるいは事故的に恋に落ちてこそ、初めて恋愛というものの値打ちがあるのであって、強制されたそれは単なる身売りである。
好きな人も愛する人もいない。それはそれでまったく問題ないのであって、無理やり世間の要求に従えば、自分を殺すことになり、果ては人生を棒に振ることになる。
色恋沙汰の苦労なんか、しなくていいならしないに越したことはない。あの時間この時間、もっと生産的なことに使うべきだたったと、少なくとも私は思う。恋愛は疲れる。そして夢はもっと疲れる。
若者に言っておく。間違っても夢なんか見ないように。しかしこれまた恋愛と同じで、避けようとすればするほど逆に向こうからぶつかってくるものでもある。
その時はもう、覚悟を決めて人生を棒に振るしかない。運命と諦めて、日がな苦悶し、疲れ切って死になさい。
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