越えていく人——南米、日系の若者たちをたずねて (神里 雄大/亜紀書房)
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題されたタイトルを考えると、全編を通して緊張感が足りないように思われる。むしろこのとりとめのなさ、ゆるさを狙ったのであればそれはそれでいいのかもしれないが。
酒を飲む場面が多過ぎるのも、本人と面識や好感がない人にはマイナスポイントのように思う。しかしまあ、なるほどなと思うところもなくはなかった、という感じか。
日本は世界の多くの国と同様に血統主義をとっている。日本の場合、父親か母親のいずれかが日本人であれば、その子どもはどこで生まれても日本国籍を取得できる。いっぽうで移民たちによって形成された歴史を持つ南北アメリカ大陸のほとんどの国は、出生地主義を採用している。これは、親の国籍や滞在資格に関係なく、その土地で生まれた者にはすべてその国の国籍が与えられるというもの。ぼくの場合、出生地主義のペルーで生まれたので、ペルー国籍が付与された。
ブラジルでは、『友だち』っていったらなんでも言えるし、いつでも頼れるっていうことなんです。たとえば、わざわざ電話して、『今日あなたの家に泊まってもいいですか?』『あ、いいよ』ってわけじゃなく、連絡なしに直接家に行って『来たぞー』って感じ。ほんとは今日はあなたと会うつもりはなかっ たんだけど、でもあなたが来たから、もうなにかやってたことは忘れて遊ぼうっていう関係があって。日本だとそういうのはあんまりないんじゃないかな。もしそんなことしたら、たぶん相手が帰ったときに『あの人が来てから予定がぐちゃぐちゃになった』とか、なんか『仕事やれなくて明日上司に怒られる』とか、そういう心配があるじゃないですか。ブラジルはもう友だちと飲んで『明日はもうどうでもいいや』って感じだと思う
「日本」を紹介しようとするとき、我々は急に、どこか自分たち以外の、もしくは外国の目を気にしすぎたことによって定義された「日本文化」を移入してしまっているのではないか。それって本当に自分たちの文化を紹介したことになるのだろうか。などと考えた。もし自分たちの生活を文化と呼ぶのなら、我々が紹介しようとする「文化」とはいつもちょっと違うところにある。生活は毎日すこしずつ変化をして、文化はそのなかで練り上げられ、更新されていく。いつかの段階で、これが我々の文化であると定義したその時点から、またすこしずつギャップが生じていく。このギャップのことをどう考えるのか
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